深まる謎
ギョロっとした眼を、ジョージはこちらに向けてくる。
「あの蛇野郎はどこだ?」
「へ、蛇…?」
いきなり、蛇野郎なんて言われて、俺は戸惑いを隠せなかった。
ちょっと考えれば、それが『獅子と蛇』の特異性を持つ王子の事かもしれないと分かっただろうが、そのちょっとという時間すらも与えてくれなかった。
「蛇野郎はどこだって聞ィテんだロウガよォォォォお!」
またしても、『破天荒快男児』の一撃だ。
俺が『最強』にすらも匹敵すると思うジョージは、彼の特異性『破天荒快男児』はただの純粋な攻撃だ。
それが、全力で放たれる事と、ジョージの全力が常軌を逸している事を除けば、特別な事は何一つとして無い。
そう、常軌を逸している。
今もまた、放たれた『破天荒快男児』は、潰れたデパートを物理的に潰し続けている。
「あンのォ裏切りモノのォ蛇野郎ガァよぉ!」
そして、『破天荒快男児』だ。
裏切り者というキーワードで、ジョージが探している蛇野郎が王子の事だと理解できて、俺はすぐに『ビルメン』を駆使して彼の居場所を探したのだが、何故なのか、彼だけが見つからなかった。
「死んではいないが、何だ…?」
王子が消えた理由、ジョージが現れた理由、それは重なるのか、無関係なのか、考える。
また、あの現場か、あの現場が出てくる。
『最強』も、ジョージも、王子も、シャリや仁右衛門やスサノオも、三超将軍や信長も、そして、この俺もあの現場に関わっている。
これが、単なる偶然なのだろうか。
結局のところ、昨年、組織があの現場から撤退した一番大きな理由は、ランク2位のジョージが精神的に壊れてしまった事にある。
その原因は明かされていなかったが、現状を見て理解は出来る。
王子がジョージを裏切った。
しかし、果たしてそれだけなのだろうか。
あの飄々としていた癖球のような男が、王子を信頼して裏切られた事に絶望して、あそこまで豹変してしまったとは思えないのだ。
「結局、あそこを攻略しないと、謎は解けないってか…」
まあ、それよりも、俺は眼前の暴風雨を何とかしなければいけないわけだが…。