始まり始まり
本拠地、それは俺の為の舞台だった。
「こんな場所に誘い出してくれるのか、大歓迎だ」
潰れたデパート、放置されたままで残っているとは運が良い。
更地になっていたら、俺の『ビルメン』が全くの無意味になってしまうところだった。
「それにしても、奴はいつになったら来るんだ…」
俺は信長の到着を待っていた。
すでに、三超将軍は勢揃いしている。
最初に来たのは、『油筆』という特異性を持つチャイだった。
黒く短い髪、小柄な男で、あまり関わった事がない俺にも愛想よく話しかけてきて、同い年という事で意気投合した辺りで、次が来た。
収まりの悪い黒髪を強引に真ん中で分けているひょろ長い村田という男だ。
自己紹介によると、『血戦』という特異性を持っているらしいが、内容は良く分からない。
年齢も一回り以上は離れていて、喋る事が嫌いそうで、場の雰囲気が急速に静まりつつあった時、最後の1人がやって来た。
他の2人と比べるまでもなく、明らかな巨漢の男で、この場の平均体重をとてつもなく引き上げてしまった。
名前は近江、特異性は『号砲』だと言った後、ガハハと大きな笑い声を出した。
そして、それから1時間近くが経ち、待っていたが、待たされていたが、待ち望んでいたわけではない男が姿を見せた。
走ってきたのか、汗だくで汗臭い。
鼻をつく臭いに、どうせ遅れてくるなら、汗なんて掻かずに歩いてきたら良かったのにと、俺は舌打ちで苦々しい気分を表現した。
「今の状況を説明して欲しい。今はどういう状況で、何がどうなっていて、何をどうしたくて、何をやり遂げたいのか」
三超将軍が顔を見合わせ、苦笑を交わし合っている。
彼らと信長は組織から同じだけの情報を与えられてきたはずなのだ。
それなのに、信長だけが蚊帳の外にいてしまっているのはどういう事だろうか。
「とりあえず、敵の情報は俺が提供していく。自分の五感よりも、まあ、第六感とかよりも、俺からの情報を信頼してくれたら良い。建物全て、敵全員、すでに把握してしまっているからな」
「信じて良いんだね、君の『ビルメン』を」
「じゃあ、狩りを始めるとしようか」
俺は信長を完全に無視して歩き出した。
三超将軍は一気に駆け出した。
そして、信長は中途半端に小走りで。