カズトと谷川の関係
「ほら見ろ、谷川、俺の作戦が正しかっただろ?」
「作戦だと?貴様のは作戦ではなく、大量失踪事件だ」
何故か、裸にされて互いに傷付け合わされていた唯と健一を見つけ、俺はホッとしていた。
ちなみに、それを行わせていた研究者は、指を1本ずつ消すという遊びをやった後で、面倒になって全てを消してしまったので、今は存在しない。
「服はこの部屋にあると思うか?」
「知るか。貴様の作戦とやらは、そこまで補ってはくれないのか?」
「まあ、子供を裸にして戦い合わせるなんて、俺の趣味じゃないからな。谷川はそういう趣味があるのか?」
「ふざけるな、そんな恥知らずな事…」
意外にも、谷川はこの研究者に対して、批判的な姿勢を有しているようだった。
俺に悪い意味で感化されてしまったのだろうか。
勿論、俺にとってはそっちの方が良い意味で、ではあったが。
「とにかく、服を探そうぜ。このまま、素っ裸のままで歩かせるのは、虐待ってやつだ」
「お得意の『消失』で、このガキ共を消してしまって、向こうで復活させてやれば良いのではないか?」
それは考えないでもなかった。
だが、嫌な予感がしたので、俺はその案を自分の中で却下していた。
具体的に、それがどんな結果をもたらすのかは分からなかったが、今はそんな賭けに出る場面ではない。
しかし、まあ、そう考えると、『消失』も俺にとっては謎だらけで、今更ながらに佐々木を復活させて聞き出すのも悪くないかと思わなくもないが、それも何となく気乗りしなかった。
「おい、あったぞ」
「は?」
「いや、このガキ共の服だ。貴様はそれを探していたのではなかったのか?」
「あ、ああ、そうか…、お手柄だな、良くやったぞ、谷川」
「おい、貴様…」
「えっ?」
「あまり図に乗るなよ。消されても構わないから、反抗的な心を持ちたくなる時だってあるぞ」
今の流れを反芻し、俺は反省する。
そう、谷川は俺に嫌々ながら従っているだけで、俺を信頼して付き従っているわけではないのだ。
それをまるで犬を褒めるように対応しては、あまりにも礼を失している。
「悪かった。今のは俺が全面的に悪い。済まない、許して欲しい」
深々と頭を下げ、俺は谷川に謝罪する。
「ふん、分かれば良い。だから、さっさと頭を上げろ」
少し照れているようだったから、谷川も根は良い奴なのだと思った。
「お前って、何か、アレだな?」
「あれとはどれだ?」
「アレだよ、アレ。よし、とにかく、子供達も服を着たみたいだし、戻るとするか!」
「おい、貴様、あれとは何だ、答えろ!」
「まあまあ、重要な事じゃないさ。それに、アレはアレさ」
「くっ、馬鹿にしおって…」
「してない、してない。とにかく、行こうぜ」
何だか、もう、谷川の事が気に入り始めていた。
果たして、俺は決定的な何かが起こった時、こいつを消す事が出来るのだろうかと少し考え、すぐにそれを振り払うように頭を振った…。