青岸のジョージ
「ここは…?」
灰色の世界で見事に復活を遂げたジョージが、呟きを漏らした。
俺は少しく緊張しながら、彼に応じる。
「よぉ、気分はどうだ?」
対等以上であるかのように振る舞うが、やはり、声は震えてしまう。
我ながら情けない事ではあるが、相手はあの『破天荒快男児』ジョージなのだから、仕方が無い。
「青岸、お前は俺に何がして欲しい」
まさか、ここまで、俺の望む通りの言葉をジョージが吐いてくれるとは思わなかった。
だが、そう聞かれてしまった以上、ここで、はぐらかすなんて無意味な事は出来ない。
「俺と一緒に、世界征服をしてくれないか?」
「ああ、分かった」
迷いもなく即答するジョージを見て、俺は心底、驚いてしまう。
「構わないのか…?」
「俺はお前に従う、その約束は叶えよう」
本当は怖かった、恐れていた。
ジョージが約束を破り、俺を嘲笑うなんて未来も容易に想像できたから。
しかし、それは起こらず、あまりにも理想的に物語は進んでくれる。
「これで、世界征服は出来たも同然だな!」
「いや、それはどうだろうな。俺は全力でやるが、再び、最強と戦ったとして、勝算は高くないぞ」
意外には思う。
あのジョージですら、最強に敗北したという事実は大きかったのだろうか。
ただ、さっきの戦いと今では、まるで意味合いが違う。
「いや、ジョージは勝つよ。この灰色の世界に来てくれた時点で、ジョージは誰にも負けなくなった」
そこから、ジョージに対して、俺はこの灰色の世界について懇々と説明してやる。
最初は疑っている様子も見せたが、結果としての自分を考えてみれば、納得するのも時間が掛からなかったようだ。
「…という事は、俺は死ねない…、いや、死ななくなったわけだな?」
「そうだ、死なないんだ。死なないジョージは誰にも負けない、絶対に!」
確信を込めて応じる、断言する。
「俺の力をお前の野望の為に、存分に使ってくれ」
「ああ、頼りにしているぞ!」
俺はついに、ジョージを手に入れたのだ。
本当の意味で、彼が俺のものになった。
嬉しくて仕方がなかった、どうしようもない興奮に満たされていた…。