終焉のメアリ
「よし、じゃあ、やるか…」
カズトの言葉に、私はギョッとする。
もう動くのだろうか、早過ぎる気がする。
「おい、青岸。俺の弱点が分かったとか言ってやがったが、それで勝った気になってるんじゃないだろうな?」
「調子に乗るなよ、カズト!お前の弱点はすでに分かっているんだからな」
青岸は何故か、自分ではなく、子供達に戦わせる。
どうやら、カズトの弱点が分かったというのもハッタリの類で、本当は何も分かっていなかったのだろう。
子供達は群がっては消され、方法は不明だが、蘇っては飛び掛かり、また、消されるという無駄を繰り返し続けていた。
「クソ、クソがっ、群がりやがって、これじゃ、まともに動けない…。対処するので精一杯だぜ、クソがっ!」
余裕に見えるカズトも、どうやら追い込まれているようだった。
子供達の猛攻を凌ぐので精一杯といった感じで、すでに足を止めてしまっている。
「無様ね、役立たずの情報屋。貴方はそこで、私が青岸を殺すのを、指をくわえて見ておきなさいな」
「クソッ、待ちやがれ、メアリ!」
滑稽で、憐れだった。
さっきまで、青岸を守るように群れていた子供達は全て、カズトを殺しに行っていた。
これならば、私は遠慮無く、そして、苦も無く、青岸を殺せる。
「奥の手を使わせてもらう」
突如、灰色から現れた青岸は、突然、灰色に消えてしまうかもしれなかった。
そうなった時、もう、右手と右足を失っている私には、次が訪れる保証なんて無かった。
どうせ、こんな状態では満足に最強と戦う事なんて出来ない。
勿論、五体満足でも同じだったが、五体不満足では尚更だ。
「殺意の果て…」
私の特異性は、殺す為に不要な全ての動作を完全に排除できるという代物だ。
そして、奥の手は、狙った対象を殺し切るまで殺し続ける為に必要な全ての事を行えるという代物だ。
代償として自分を失う事になるが、何も失わずに得られる物など、この世界にはたった1つすらもありはしない。
この状態ならば、最強も殺せるし、青岸も殺せるが、どちらもは無理で、だから、私は後者を選んだ。
万に一つもないだろうが、最強は覆す可能性を持っているが、青岸にそれはない、皆無だ。
それ故、青岸に使って、奴が灰色に逃げようとも、殺し続けて殺し切る。
私を殺そうとしていたカズトにとってはさぞ悔しい事だろうが、そいつはざまあみろと言ってやりたかったが、言う機会は無いだろう。
何故ならば、もう、私は私を失い、すでに私は私を動かせず、その眉すらも微動だに出来ないのだから…。