表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
青騎士  作者: シャーパー
101/168

終焉の王子

その変化に、俺は戸惑う。


ジョージがジョージである事を止めた。


襟櫛が視線を向けてきて、彼もそれに気付いた事が分かる。


最強が舌打ちしていて、それも追い打ちを掛ける。


まあ、特異性を持つ者なら、ジョージの変化に気付かないなんて事は絶対にない。


アレは、そう、温存している力だ。


誰もが温存していて、ほとんどの誰もが使わない。


最強はどうだか知らないが、襟櫛と違って俺は元々、組織で働いていたわけで、初見というわけではない。


その時の経験を活かすならば、先手必勝という事になる。


温存している力を使えば、もぬけの殻となる。


つまり、何かを考えて行動しているわけではない。


最後の意思を忠実に実行しているだけだ。


だから、受け身でいてしまえば、それを実行されてしまい、そのまま終わらされてしまう。


しかし、こちらが動いてしまえば、最後の意志に違う条件が加わってしまい、歯車を狂わす事が出来るのだ。


「王子、逃げてくれ。もう、守ってやる余裕が無い」


襟櫛の言葉を聞き、それは確かに正しいとは思う。


だが、それを言ってすぐに動かなかった時点で、様子見をしようと待ち構えた時点で、アレへの対処としては間違いだ。


「仲間外れにするなよ。奴の決断、それは俺を含めての事だろ」


そうだ、逃げない事を明言した上で、やるべき事を即座に実行する。


先手必勝。


動かなければ、勝ちはない。


それを襟櫛に見せなくてはならない。


ここで、理屈を云々と披露して襟櫛を説得しようとしても、彼も容易に納得はしないだろうし、それが今のジョージにとってはすでに受け身でいたという扱いになってしまう。


無数の蛇をジョージに向かって動かす。


「馬鹿が」


最強の言葉が聞こえる。


でも、それは強者の論理だ。


自分や襟櫛のように特別でない者にとって、経験は全てに勝る。


あの時、ああしたからこそ、上手くいった。


これは、とても重要な事なのだ。


蛇が次々とジョージに噛み付いていき、その身を包んでいく。


毒があり、痛みがあり、本来は致命傷になるのだろうが、今のジョージにとってはそういう事が起こらない。


全身が蛇に噛み付かれ、全てがその斑に染まったかのような異様さになっても、ジョージは動かなかった。


やはり、そうだ。


先手を打つ事によって、ジョージは最後の意思を上手く実行できていない。


つまり、俺は、この場で最も弱いはずの俺が、勝利を得る。


「封殺した。さあ、止めを刺そうか…」


満を持して、獅子を登場させる。


獰猛さを露わにして、獅子はジョージに飛び掛かった。


その瞬間、耳を劈くような叫び声がジョージから発せられて全ての蛇が消し飛んで、まず一歩。


踏みしめた地面に凄まじい亀裂が走り、俺の視線は僅かな間だけ、そこに向かってしまう。


それと同時、距離はほぼ無かったかの如くに潰され、俺の顔面はジョージの右手に掴まれていた。


暗転。


終焉…。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ