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青騎士  作者: シャーパー
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襟櫛の残酷

ジョージがジョージでなくなった。


それは、きっと、特異性を持つ者なら、誰にだって分かっただろう。


王子を見て彼が頷き、最強を見て舌打ちを聞く。


自我を捨て去り、ただの物と化す。


いや、物と化すではなく、化物に成り果てるという方が正しいか。


「王子、逃げてくれ。もう、守ってやる余裕が無い」


ジョージの動きは緩慢だ。


速度を主体としたものではないのだろう。


だからこそ、逃げようと思えば、逃げられる。


しかし、俺は逃げない、逃げるつもりはない。


どんなに無理強いしようとも、特異性を持つ者が自分からこの状態になる可能性は極めて低い。


それを、そういう状態を、ジョージが敢えて選択したのだ。


ここで戦わなければ、生涯、二度と相見える機会は無いかもしれない。


最強も思いは同じようだ。


だが、王子では殺される為だけに存在しているのと同義であり、無意味だ。


そして、そんな彼を守るという無駄を選択し、このとっておきの機会を無駄にしたくなかった。


「仲間外れにするなよ。奴の決断、それは俺を含めての事だろ」


王子が無数の蛇をジョージに向かって動かす。


「馬鹿が」


口に出して同意はしなかったが、俺も同じ気持だった。


王子には悪いが、この場面において彼の存在はすでに数として入っていない。


いや、正直なところ、俺や最強ですらも半人前という扱いだろう。


蛇は次々とジョージに噛み付いていき、その身を包んでいく。


毒があり、痛みがあり、本来は致命傷になるのだろうが、今のジョージにとってはそういう事が起こらない。


全身が蛇に噛み付かれ、全てがその斑に染まったかのような異様さになっても、ジョージは動かなかった。


「封殺した。さあ、止めを刺そうか…」


満を持して、獅子を登場させる。


獰猛さを露わにして、獅子はジョージに飛び掛かった。


その瞬間、耳を劈くような叫び声がジョージから発せられて全ての蛇が消し飛んで、まず一歩。


踏みしめた地面に凄まじい亀裂が走り、俺の視線は僅かな間だけ、そこに向かってしまう。


それと同時、距離はほぼ無かったかの如くに潰され、王子の顔面をジョージの右手が掴んでいた。


助ける、というよりも、咄嗟に反応するという方が正しく、俺は持っていた日本刀を二振り撥ね上げる。


ジョージの右腕、その皮膚に刃が触れた時、凄まじい振動が俺の両手に伝わって、刀を落としかけてしまう。


すでに、王子の頭部は握り潰されていたが、残っていた死体の腰部、そこに左手を押し付けた最強がそのまま、死体をジョージにぶつけつつ、圧倒的な威力の衝撃波を放っていた…。

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