6:バカがバカなふりしてやってきた
そこにいたのが、馬込だった。皆がざわつくのは無理もない。身長は170センチぐらいと普通の大きさではあったが、馬込は横にでかかった。90キロぐらいはあるのだろうか、とにかくデブだった。
しかしそれだけではこのどよめきの説明がつかない。もちろん理由はある。それはそんなデブが手にはオープンフィンガーグローブを、背中には漆黒のマントをはためかせ、「一狩り行こうぜ!」と言わんばかりに大剣を持っていたからだった。
そしてその隣にはなぜか一昔前に話題を集めたあの犬型ロボット、アイボ君がいた。
絶句。
これが俺の馬込に対する第一印象だった。しかしそんな俺の感想をもちろん知る由もないあいつは、周囲のざわめきなどまるで気にせず、どすどすと大股で会場の入り口から歩みを進め、そして、何の因果かぽっかりと空いていた俺の横の席へとやってきたのだった。
「おいおい、マジかよ隣来ちゃったよ」という俺の心の声は届かず、馬込はそのマントをすらりとひるがえし、俺の隣の席へドスンと座った。悲鳴をあげたパイプ椅子がギシギシと嫌な音をたてる。
「君、名前は?」
かいがいしくも横についてきたアイボを拾い上げ、自分の膝の上にのせながら馬込は質問をなげた。
「えっ……あっ、うん…とりあえずさ…」
「なんだ?」
「アイボ、懐かしいよな」
俺がこの非常識な勇者様にそう言うと、馬込は一瞬驚いた顔をした後、大きな声で笑った。ひとしきり笑ったのち、「つっこむとこそこかよ」とぼそりといった。
これが、俺と馬込との出会いだった。




