4:奇才あらわる
馬込からの電話の内容はいたってシンプルだった。というより一言だった。
「時はきた、約束の地へ今すぐ来い」
電話に出るなりそう言い放つと、こちらの予定を一切確認することなくがちゃりと電話は切られた。
「毎度の事とはいえ、こいつは何なんだよ……」
携帯を眺めつつ、ため息をつく。
普通ならばこんな電話シカトするんだろうなという事はわかるのだが……。クローゼットを開け、出かける準備を始める。パジャマ代わりのヨレヨレのTシャツから、決してオサレとは言えないが清潔感のある淡い黄色のポロシャツに着替え、ハーフのジーンズをあわせる。
特段服に気を付けることはない。清潔感、これだけあればよいのだ。
異臭があると周りからすごい目で見られ、とにかく目立つ。結果的にボッチにはむいていない。
目立っちゃう 陰口一つ たたけない
玄関でハイカットのスニーカーを履き、鍵と財布を手に取り、ドアを開ける。
「あ…あっ…」
あちい、何だこの暑さは。
玄関を抜けると、そこは南国だった。いや、南国は嘘か、だってここにには水着を着た踊り子もいなけりゃ海もない。あるのは照り返す日差しに大気がゆらめくアスファルト、すかっり水気を失った雑草のみ。
家賃6万5000円(築20年)の我が安アパートの前に広がるこの光景は南国とはほど遠い、“難国”である。
げんなりしながら、アパートの階段を下り、一階にある自転車置き場から我が愛車パトラッシュを取り出す。
パトラッシュにまたがり、俺は足に力を入れた。




