18:ニートの皆さんへ、ルール説明
部屋の中へと誘導されると、そこは本当にどこにでもあるような学校の教室だった。前に黒板があり、椅子と机がある。際立った特徴もない、普通の教室だった。
机の端に目をやると、そこには名前と5桁の番号が書かれていた。どうやら、席は決まっているようだ。自分の名前が書かれた席に座るよう促される。“04677番 大山雄介”と書かれたテーブルを見つけた。皆も同様に席につきはじめる。
着席を確認すると、俺たちを引率した係員が無線に指示を出す。
「第30班、全員着席、問題無し」
「了解、それではそちらに向かいます」
無線越しに女性の声が響く。そして待つこと1~2分だろうか、タイトな黒スーツに身をつつんだ女性が一人、教室へと入ってきた。間違いない、彼女は……。
「初めましての人もそうじゃない人もいるようだけど…、改めて自己紹介いたします。私の名前は池上マキ、今日から皆さんが所属する事になる第30班の生活をサポート・監督する責任者です。堅苦しいのは苦手なんで、マキさんとかマキちゃんとか好きに呼んでね」
気さくに自己紹介をする彼女は、やはり俺をビンタで失神させ、その後無理やりここまで拉致してくれた美人なお姉さまそのものだった。
「ええ、みんなにとってみればいきなり家から連れ去られて、こんな所にいるのだろうから、戸惑うことも多いだろうけど、これも皆の自立のため、私達もできる限りのサポートをするから、これから頑張っていこうね!」
雰囲気からいきなり、今から皆さんに殺し合いをしてもらいます!ばかやろう!等と言われることも想像していただけに、思いがけない優しい口調に教室のムードは安堵につつまれた。よくよく考えればいきなりの拉致監禁であるので、こんな安堵している場合じゃねーだろということなのだが、これがいわゆるギャップ効果というものなのだろうか。ギャップ萌えマジぱねえっす。
「それでは、ここであらためて皆にはこの“夢の島”内でのルールを説明します。まずその1、法律順守。当たり前ですが、ここはバトルロワイヤルでも核戦争後の世界でもありません。あくまで日本の一部であり、法治国家です。犯罪を犯せば私達により拘束・処罰されますので、品行方正に努めましょう」
「その2、就業。もうご存知だとは思いますが、皆さんは就労支援プログラムの対象者としてここにいます。ですから、当たり前ですが皆さんには働いてもらいます。皆さんがどんな仕事をするかはあらかじめこちら側にて各自の適正を考慮し決めてあります。自分がどこで働くかは後で渡す資料に書いてあるので、忘れずに確認してね。あっ、そうそう、皆さんが住む住居もそこに記入されているので、こちらもきちんとチェックね!そして……」
ややためて、マキさんはのルールを述べた。
「ルールその3、自立すること。皆さんのここでの暮らしは、就労の義務はありますが、基本的には自由です。日々の生活の自由行動は保障されています。当たり前です、皆さんは別に刑務所にきたわけではないのですから。しかし…」
「そうであるがゆえに、ここでの生活にはお金がかかります。税金によって君たちの生活が保証されるなんてことはありません。例外的に、住まいのみ提供いたしますので、家賃負担はありませんが、それ以外の全てにはお金がかかります。そんな生活の中で、皆さんに臨むこと、それが自立です。皆さんは自分達の生活を、自分達が稼いだお金のみで暮らさなければなりません。こんなことは考えたくもないけど…もし皆が無計画に自分の給料を使い、食べるものにも困ったとしても…私たちは一切助けません。いいですか、絶対に助けません」
絶対に…助けない?
「食べ物を与えたり、病院に入院させたりなどは一切しません」
「それが原因で…死んでもですか……」
震えるような声で、質問が飛ぶ。“死”という言葉が出て、なごやかだったクラスの雰囲気が一変した。
「はい、死んでも助けません!皆さんの自立をのぞみます!」
マキさんは、今日一番の笑顔でそう言った。




