アトランタス
「リグレットさん、なんです?その汚いモノは」
「光の森でサーベルウルフを見た。この男は……あれだ。参考人だ。」
「サーベルウルフ!?俄に信じられない……」
光の森ってのは、多分さっきいた森のことだな。
そして今は町についたので門番の人とマリアがお話し中。
でもね?汚いモノって酷くね?
モノって……。
確かにね。返り血を浴びて僕はそれはもう酷い臭いですよ?
カッピカピで血の染みとかできてるし、どこのもののけの姫だって話。
それでも女性にそんなこと言われると、くるものはある。
「わかりました。特別にその男が通ることを許します。おい、男。わかってると思うが、くれぐれも道の端を歩けよ。ゴミみたいななりしやがって……」
…………あぁ?
ってめぇ……今すぐ三枚におろしてさしあげましょうかぁぁぁ?
「ほ、ほら、行くぞ」
「うぐぐぐぐ……」
不穏な気配を感じ取ったのかマリアは俺を引きずって門をくぐってゆく。
ちくしょー!!!覚えておきやがれ!
俺は刃ーー黒狼の刃に皮を巻いて柄を作ったものーーにかけていた手を下ろした。
気を取り直して、だ。
もう、町っていうか、都市だよな……ここ。
幅十メートルはあるであろう防壁を見ながら思った。
都市アトランタス。
人口推定五十万人の大都市。
土地は大きな城を中心として、円形に広がっている。
直径は徒歩で一時間半ぐらいの距離。
出入り口は北と南のみ。
文明的には武、魔術、バランスよく、食べ物がおいしいらしい。
そういえばあまり考えて無かったけど長さ、時間の単位は地球と一緒なのね。
言語と文字も日本の物ではないが、わかる。
そして自然とこの世界の言語を話せてるのを考えると……
あまり深く考えるなってことだな!
ところで、さっき気になったんだが……。
「マリアって意外とすごい人なの?」
「ん?どうしてそう思う」
「さっきの門番さんなんか敬ってる感じだったし、初めて見た時の魔術すごかったし?」
「そうでもないさ。王直属騎士団の新米だ」
王直属……?
響きがすげぇな。
おっと、城壁が終わるみたいだ。
「おおっ!!!」
広がる光景に思わず声を上げてしまう。
なんせそこで待っていたのはRPGの世界のような風景だったからだ!
人々は笑顔でとても活気がある。
食物店で、かわされている他愛ないやり取り。
露天を冷やかしにまわる子供たち。
うん、楽しそうだ。
ただ、やはり男は少ないみたいだな。
人数比は九対一だろうか。
なんでなのか聞いてみよう。
「こんな入り口の大通りには自分から来る輩はいない。門番の兵士に絡まれるからな。男はだいたい東か、西の防壁寄りが多い」
だそうだ。
まぁ……ジェンダーってのを痛感するねえ。
っと
「あれ?お城行くんじゃないの?」
「お前のその姿で行けるかッ!その服なら私でも首が飛ぶわ!!!まずは身を清めに協会に行くぞ。私の怪我も治しておきたい」
「あ、そーゆこと」
すぐに脇道に逸れちゃうからどうしたのかと思った。
たしかに失礼だよな、王様がいるかもしれないのに。
髪もボサボサだし獣臭はするし。
「ふぅ、腐った世界をぶっ壊すとか言っといて、できるのかね俺は……」
「ウサギ?どうした?」
「ウサギっての決定なんですね……」
うれしいんだけど、なんか締まらねぇよな。
この名前。
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