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あだ名?


「ぷっはぁぁぁ!!!死ぬかと思ったぁぁ!!!」


俺は盛大に地面に倒れ込む。


今回はやばかった!熊さんの比じゃなかった!


実際交差した時、折れた刃は俺の方の剣かもしれなかったからな。


マリアは背を向けながら黙々と黒狼を剥ぎ取りにかかっている。

現金なやつめ。


「やっぱそういう素材って売れたりすんのか?」

「それはそうだな……サーベルウルフともなると金貨十枚は付くだろう……ん、堅い」


金貨十枚ってのがどんだけの価値か分からんが、すごいのだろうか。


「で、お前は本当に人間なのか?」

「その言い方は酷いんじゃないか……?」


男なのか?の時よりひどいっすね。

種族を否定されたからね今。


「単体でAランクの魔獣を倒せるともなると騎士の中でも限られる。無論男なら皆無だ」


そ、そうなの……?


ってかそんな危ない魔獣だったのか!

いや、マリアは最初から危ないって言ってたね。はい。


「ほらっ!ぼさっとしていないで手伝え!こっちは右手がつかえないんだぞ!」

「お、おうっ!」


右手の件については俺のせいなので手伝うことにする。

うっ!?堅っ。


◇ ◇ ◇


「ざっとこんなものか」


満足そうにマリアは黒狼の亡骸を見下ろした。


それは牙、爪、皮、刃に分かれている。

というか分けた、主に俺が。


人使い荒いっすよ……先輩。


「ほら、終わったなら持っていくぞ」

「はいはいっと。うっ……生臭っ……。で、これどうするんだ?」

「どうするも何もお前次第だろう」

「へ………?」

「なんだ?」

「いや、少し意外でな。てっきり「はんっ。男なんぞにくれてやるかぁ~!べろべろば~」みたいになるかと」

「切ってもいいか?」


いやいやいや!!!

やめてくださいよマリアさんっ!!!


俺が距離を取ると、マリアは再び歩き出す。


「もともと魔獣の素材は依頼でもない限り討伐した者のものになる。売るもよし、装備を作るもよし、だ。これは大陸中での規則。女も男も関係ない。まぁ、格差を利用する輩は出てくるだろうがな」


格差を利用する輩ねぇ。

許せんな。

やっぱり力ある者はない者に手を差し伸べるべきだと思うんだ。

綺麗事ってのはわかってるけど。

いくらなんでもこの世界は酷すぎる。


俺が思考の海に沈んでいると前方で動きがあった。

不自然にこっちを見ながらマリアが頬を掻いている。


ん?どうした?


「今回の一件でな、わ、私は少しお前を見誤っていたようだ。守ってくれたし、強いし、それでいて奢らない。か、勘違いするなっ!男に対する見方を変えた訳ではないぞ!お前だからなのだぞ!」


ここでポカーンとなってしまう俺は悪くないはず。


えーと?ウサペディアで翻訳すると……?


『あ、あたし、あんたのこと……男だからって少し誤解してたみたい。守ってくれたし……優しいし。はっ!?か、勘違いしないでよね!バーカ!』


ブハッ……。こ、これは……。


顔を歪ませる俺の表情を見てかマリアは恥ずかしそうに、不安そうに顔を伏せる。

しかし、俺の目を窺うように。


言い表すなら、いや、言い表さなくてもそれは、数々の男を落としてきたとされる女性の最終兵器(リーサルウェポン)




上目使いだった。




「お、お前を対等に見てやる。だ、だから…………私を名で呼ぶことを許す……。」


語尾の方はもう聞こえないくらいに小さくなっていたが、なんとか俺の耳に届く。



これは、もう、そうだ。あれだね。



ツンデレいただきましたぁぁぁっ!!!



しかしこの可愛さはなんだっ!

ツンツン→ツンデレがここまで破壊力をもつものなのか!?


も、もっと……。

もっとデレが欲しい……。


俺は一瞬で顔を取り繕い、すました顔で話しかける。


「それはありがたいんだけどさ、一方的にってのは対等じゃないだろ?俺のことも名前で呼んでくれよ」


どうですかこの手腕は!!!


そういえばマリアは俺のことお前としか言ってなかったと思ったんだよ。


ニヤニヤを抑えながら返答を待つ。


「な、名前でっ!?……あ、……あー、あおっ、……あ、」

「マリア?」


(あおい)

その三文字を顔を真っ赤にしながら発音しようとする姿に萌えつつ、俺は小首を傾げて囁く。


ついでに自然な流れで名前を呼んだのがミソだ。


「あ、あおっ、あ…………あ"あぁぁぁぁあああああ!!!!!!」

「な、なんだ!?」

「アオイウサ!!!ウサギ!!!ウサギだ!!!お前などウサギで十分だ!!!ふんっ」


混乱の末、意味の分からないことを言って駆けて行ってしまった。


えーとこれは……姓の宇佐からもじったあだ名ってことですかね?



うん、いいじゃん。



「ふふっ、待てよ、マリア!」

「待たんっ!!!」


笑みをこぼしながら俺はマリアを追いかけていくのだ。

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