黒き狼-2
そうだよ。なにがここまでだ。
引き付けるだけ引き付けといて死んだら後は本人まかせ?
冗談じゃねぇ!!!
俺は守るって言ったんだろうが。
なら最後まで約束を果たそうじゃねぇか!!!
「……当然だ!」
その言葉の意味を噛み締めながら俺は言い放つ。
黒狼は少しは堪えたようで、ふらつく足を踏ん張りながら、意識を覚醒させようと頭を振っていた。
「しかしこれからどうする。言っておくが魔術は今ので打ち止めだぞ」
「分かってるよ。剣渡せ」
「……いいだろう」
と、剣の柄を俺に向けてくる。
あれ?なんか物聞きが良くないですか?
俺の意思を読み取ったのかマリアは不機嫌面で付け足す。
「腕を怪我している私よりお前の方が使えると思ったまでだ。勘違いするな」
「……ありがとう」
俺は黒狼と向かい合う。
黒狼も回復したようで、再び機を窺うようにゆっくりと歩きだした。
足、胸、頭、牙、刃と視点を移し、どこが一番有効な打突が与えられるか考える。
して、互いの視線が重なった時だった。
「!!!」
両者とも一気に肉薄する。
俺が叩き切ろうと剣を振り上げる。
しかし、黒狼も頭を俺の中心から外し、口に付いた刃で俺を断ち切ろうとする。
「ヴぉぉぉぉおおおッ!!!」
「ガァァァァアアアッ!!!」
二つの閃きが交差する。
無機質な短い音の後、空にはね上がったのは一本の刃。
「ガルッ!?」
黒狼の刃だった。
確かな手応えを感じて、俺は身体を百八十度捻って地を駆け出す。
その先にあるのは驚きと恐怖を顔に張り付けた一匹の獣。
後一歩の所で俺は高く跳躍した。
陽を浴びて、俺の得物が眩しく光を反射する。
おい黒狼よ。
体から力が沸き上がって来るんだよ!
お前に負ける気がしねぇ!!!
「止めだァァァァッ!!!」
怒号とも呼べる叫び声。
突きだされた切っ先は、黒狼を捉え、骨ごとその額を貫く。
同時に、飛び散る鮮血が俺の服を赤く染めあげた。
「悪いな」
今回は短いですごめんなさい。
思えば分割するほどじゃなかったような……。