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Auftakt~春の日の出会い

 冬の寒さも完全に過ぎ去り、空からは暖かな日差しが降り注いでいる。数日前までは美しく咲き誇っていた桜も、風が吹くたびに少しずつ花びらを散らしていた。

 そんな陽気な春の昼下がり。

 ほとんどの生徒が教室で与えられた席に着席している中、学校への通学路を駆けている一人の男子高校生の姿があった。

 時刻は既に十二時五十八分。ポケットから取り出した新しいスマートフォンで時間を確認すると、男子高校生――高崎(たかさき)和宏(かずひろ)は最後のあがきとばかりにスピードを上げた。

 さすがに入学式から遅刻するわけにはいかない。先日のオリエンテーションの時の様子だと、あと二分あれば何とか教室までたどり着けそうだ――何もアクシデントがなければ。

 通用門と書かれた門の前を素通りし、事前に入り口として指定されている正門へと急ぐ。上から散ってきた桜の花びらが鞄のポケットに入り込んでいるが、それを取り除いている時間はなかった。

 脇にあった黒い金網が途切れ、前方に門が見えてくる。

 和宏はスピードを落とすことなく、カーブにさしかかった。

 曲がりきると学校の敷地が目前に現れる――と同時に視界に捉えた、こちらに迫るスカートをはいた人影。気づいてすぐに止まろうとしたが、手遅れなのは明らかだった。

 ぶつかる、と思った時には反射的に目を閉じていた。

 直後、予想していた通り体に重たい衝撃がかかった。

 反動で体が後ろへと倒れる。手をつくことで、かろうじて背中が地面に着くのは回避できた。

 地面にぶつけた部位に痛みを感じながらも、ゆっくりと視線を前方へと向ける。相手には悪いが、ここで時間を浪費している余裕は無い。ただでさえ、時間ギリギリなのだ。

 立ち上がろうと腕に力を入れようとしたところ――前方に広がっていた光景にその動作が止まった。

 前に倒れている少女。その姿に和宏は目を奪われていた。

 腰くらいまであるやんわりとした黒髪。わずかに幼さの残る可愛らしい顔立ち。大きく成長した胸。スカートから伸びている柔らかそうな太もも。傷一つない、美しい素足。そしてスカートの端からは、可愛らしい白い下着が顔を見せていた。

 女子生徒は和宏の視線に気づいたらしく、前かがみになりながら慌ててスカートで下着を隠す。わずかに頬を染めながら睨みつけてくる表情。それすらもとても魅力的だった。

 数秒後、少女は顔を二、三回横に振ると、手を地面について立ち上がる。

 その様子を見ていた和宏の脳裏には、午前中に遊んでいたPCゲームのワンシーンが浮かんでいた。

 ある高校の入学式の日。時間ギリギリで駆け込み登校してきた主人公(男子生徒)は、校門の前で女子生徒と衝突する――そう、ちょうど今のように。

 相手はとんでもない美少女で、主人公は見とれて立つことも忘れてしまう。その間に立ち上がっていた美少女は、天使のような微笑みを向けて主人公に手を差し出すのだ。告白の言葉と一緒に……。

 そんな光景が和宏の頭の中でフラッシュバックされる中、目の前の少女も先程とは対照的な柔らかな微笑みを向けてくる。

 まさかと思い、相手の右手に視線を向ける。すると頭の中の映像と同じように、こちらに手を差し出してきた。

「私と――」

 少女の優しい声が降り注ぐ。そして、一拍の呼吸。

 和宏にはそれに続く言葉が予想できていた。もちろん、『付き合ってくれませんか?』だ。

 既に質問に対する答えは出ている。というか、そんな嬉しい申し出を断るわけがない。

 和宏がまだかまだか、と待ちわびる中、少女の口がゆっくりと開く。

「――『吹奏楽』やりませんか?」

「はい、喜んで!」

 和宏の手が少女の温かな手のひらに触れる。それとほぼ同時に、SHR(ショートホームルーム)開始のチャイムが鳴り響いた。

こんにちは。

お久しぶりになる方も多いのではないでしょうか。

連載開始から長い時間が経過し、改めて改稿することになったので、新しく連載を開始する形をとらせていただきました。ややこしいので、改稿前のものは削除いたしますのでご了承ください。


この作品は、ライトノベル系の公募に出したいと考えています。

誤字脱字、疑問点、気づいたこと、アドバイス等がありましたら、感想やメッセージを通して、お伝えいただければ幸いです。

厳しい意見も大歓迎です。

よろしくお願いします。

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