修学旅行「当日」
「いよいよ出発だねー」
「そうだね」
「あんたちゃんと寝たの?」
「寝不足だよー」
「バカじゃないの?」
今日は修学旅行だ。利佳子は眠たい目をこすりながら、なるせと話している。
「利佳ちゃん、頑張ってね」
「何に?」
なるせは利佳子の頭を小突いた。
「あんた本当鈍いねー。大熊くんに言うよ!いいの?」
「えっ、意味わかんないけどとりあえず言わないで…」
なるせは、浩也と何か良い進展があるように…、と本人には言わないが願っているのだ。これに本人は気付かないので思わず頭にきて小突いてしまった。しかし、なるせはこの根っからの天然の利佳子が好きなのだ。
『…大熊くんもこんな利佳ちゃんが好きなんだろうなー』
なるせは心でつぶやいていたのだった。
修学旅行1日目の奈良はクラス行動だ。法隆寺や薬師寺、利佳子はとても感動していた。
「なる、見て!あれが法隆寺だよー!」
「そうだね」
「何?その反応はー!この壮大さ…」
「あんた、興奮しすぎ」
なるせに小突かれながら利佳子はパチパチ拍手しながら建造物を眺めているのだった。
1日目の宿泊所では、利佳子はなるせと同じ部屋だった。
「こら利佳子!早くしな!」
「待ってよー!」
「あんた子供じゃないんだからもっとしっかりしなさい」
利佳子は「テヘヘ」とニコニコしながら部屋に入った。
「もうすぐご飯だね。服着替えとこう」
このときもうすでに利佳子は服を着替えていた。
「ちゃっかりしてるな」
なるせはため息をつくように言ったのだった。