体育大会「練習」
利佳子たち3年生の学年団体競技は百足競走だ。
知っていると思うが、クラス全員が一列に並び、
息と足を合わせて前進していく競技である。
最初に男子が行き、次に女子が行き、最後は全員で行く。
「良い?みんなで声だすよー?」
「はい」
「声がちっちゃーい」
「はお!」
応援団の副団長の猿田文の指揮で
みんな一斉に前進する。
しかし、最初はうまくいかないもので、
ドドドッ…。
すぐに転んでしまう。
利佳子は一番後ろだから、前に引っ張られるのだが、
なぜか転ばない。
いつもは何もないところで転ぶ利佳子だが、
こういうときだけは本当にしっかりしている。
「行くよー、せーの」
転んでもあきらめずに練習をするので、
利佳子はだんだん飽きてきていた。
しかし、浩也も頑張っていると思えば
乗り越えることができたのだった。
そして、利佳子は意外にも足が速かった。
100mは全員走るのだが、
200mや800m、運命競争、リレーの4種は
クラス選抜でどれか1種目2名ずつ、リレーは、
ほかの選抜に出ていても出られるということで、
利佳子は200mとリレーを走ることになった。
「利佳ちゃん、応援してあげる。
だからどっちも1位になるんだよ」
「うーん、自信ないなぁ」
「そんなこと言っちゃだめでしょぉ!」
「じゃぁ、なるは800mに出てね」
「ええ!って、文ちゃん、まだ出るって決めてないよ!?」
応援団副団長の猿田文が、利佳子たちの
話をきいていたのか、黒板になるせの名前を書き始めた。
「やったぁ、なるも出るから頑張ろう!」
「って…。はぁ。仕方ない。でるか。
その代わり!絶対1位とるんだよ?」
「はーい」
利佳子は満面の笑みで手を挙げ喜んだ。