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ボケ10点
少し肌寒さが残る4月。
中学最後の遠足から帰っている途中だった。
「わっ!」
3年生、猪島利佳子は倒れている看板を踏んでつまずいてしまった。ボーっとしていて、気づいたらそうなったようだ。
「ははっ、ボケ10点~」
「それ何点中ですか?」
「10点中!」
利佳子はドキドキした。
西鳥達紀と大熊浩也に見られてしまった。心臓が早鐘を打っている。
達紀は鼻でくすっと笑っていたが、浩也はおもしろかったようで、「ボケ10点」とまで言っていた。
この日から、利佳子は浩也のことが気になるようになっていた。
しかし利佳子は人を好きになったことがない。だから、利佳子はこのドキドキが何なのかわからなかった。ただ、一つ思ったことは、「今のはボケたんじゃない…」ということだ。それでも利佳子はボケという言葉に妙にドキドキしたのであった。