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冬が来る。11月も半ば。外が涼しくなり、人の喧騒が夏より減り、虫たちや生物の息吹も減ったころ。

私はようやく熱が引き、起きていられるようになった。


そのころからちょくちょく長山会館にも顔を出し、瑞葉様の護衛の役目も担うようになっていった。


自警団の役割はほぼ無かった。有事の時は防衛に参加、と言っても、兵賊同士の争いもなかったし、領地を狙う領主や国主もこの辺りには存在しなかった。瑞葉様は町の良家として認識されはじめ、自警団の存在も平園で周知され始めた。


1月ごろ、クラベが尋ねてきた。仕事ではなく私人として。

なんか人を連れてきている。若い男性。クラベはキリヤマレンと紹介した。


レンはこちらに挨拶する。

「初めまして、キリヤマレンです。イヌイから話を聞いて、会いに来ました。あなたも陣営の方だって伺って」


陣営とは魔王の陣営というやつだろうか。そうはいっても私は魔王の陣営について何も知らないのだが。


「そういうことになってる」と私は返した。



クラベは間を持つように喋った。


「呪物の先在を持つ人には陣営の人が多いんですよ。僕たちは贈り物、と呼んでいますが。陣営について話してもいいですか?」


と尋ねてくる。その内聞きたいと思っていたから、私はどうぞ、と言った。


「陣営には贈り物は貰えなかったけど、陣営を動かす手足となる悪魔たち、と、贈り物を貰えた議員たち、で構成されます。陣営の目的は大陸の西からやがてくるだろう軍勢の撃退です。やがて世界は大陸からくる帝国に征服され、私たち魔王の陣営のものは皆殺しにされます。それに対する備えをしています」


話を聞くと、大陸からくる侵略に備える結社のようなもの、らしい。

誰がいつから始めたかは知らないが、口伝で継承され続けた思想らしい。


1,侵略者が大陸からくる。

2,侵略者は結社のものを皆殺しにする。

3,侵略者から結社のものを守るために、統率するものが来る。

4,侵略者と統率者は戦う。

5,そのために戦いの日に備える。


というような内容だった。


「侵略者が魔王の陣営を皆殺しにするっていうのは、向こうに何の動機があるの? 陣営の人かどうかどうやって見分けるの?」


と私は聞いてみた。


「それは私たちだけが、侵略者に最後まで抵抗するからです。国体にも同じような思想がありますが、私たちとは起源を異にします」


まぁ大陸から侵攻があるっていうのは否定しないけど、それはいつ来るかわからないわけで。


それより日本地域の情勢の方がよっぽど現実的問題である気がした。


「まぁ国を憂うのはいいことだけど。結社ってことは組織ってことだよね。どうやって繋がりを保っているの?」


「おもに自分の意志ですね。自分で陣営に留まって、自分で陣営に協力します。義務や規則があるわけではないです」


あー、あれか。古代にはやった本当に秘密結社みたいなものなのかも、と思った。



「わたしは協力するか定かではない…」とつぶやいた。


クラベは構わずに言う。

「これが魔王の写真です。ミヒメアサラシという名前で、大頭目が治める都に住んでいます。身分は…」


私は言葉を遮って、ちょっと動揺しながら聞き返した。

「名前、もう一度聞いていい?」


「名前ですか? ミヒメアサラシです」


アサラシ。アザラシ。アザラシ神。これは偶然だろうか、死後に聞いた単語が出てきている。


わたしは不意な偶然の一致に気味が悪くなって具合が悪くなってきた。


「この話はまた今度聞くね。概要は分かったから。せっかく来たんだから、ゆっくりしていくといいよ」


私は二人と適当に雑談を交わしながら、昼食時まで二人と過ごした。



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