表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
17/32

17


クラベの友人だという、兵賊の頭目、「キリヤマ」という相手と、何度かの交渉を経て、話の通じる相手だという印象を持った。




1,平園に居住するならば歓迎する。

2,ただし居住に際しては、他の住民と同じ額の税金を払わねばならない。

3,それ以外の特別の要求はしない。

4,平園における安全の保障は約束する。

5,他の兵賊から、平園までの道のりの安全を保障することはできないが、なるべく便宜を図る。


という内容だった。五番目の他の兵賊から守ってー、というのは、こちらからお願いしてみたのだが、さすがにそこまでは無理らしい。


平園周辺の兵賊には襲わないように使者を送る、ということだった。


内容としては十分すぎる内容だ。


私は瑞葉様へ情勢を説明し、平園への移住が最善だと護衛の立場から伝えた。


万が一平園の兵賊に問題があれば、こちらで対処しながら別の都に移住すればいい、と付け足して。


この護衛移動生活はとにかく金がかかる。瑞葉様も早めに腰を落ち着けたいに違いないと思っていたが、兵賊が支配する町、というのが気にかかるらしく、他の方法を求めてくる。


しかしここは納得していただかないと、他に方法がないので、兵士たちと私で説得して、納得してもらった。


「いざとなれば俺たちで兵賊の集団をぶっ殺して、平園の支配を覆しちゃいますよ」とムラキが軽口をたたくが、そんなことをすれば周辺の兵賊からフルボッコなのは目に見えていた。


クラベはムラキに怒ったように言う。

「キリヤマの一団を甘く見てはいけません。関東でも十指に入る兵賊なのですから」


ムラキはクラベに笑わずに言う。「冗談だよ」


ムラキはクラベが霊能があるからか、他の従者より親しげに接していた。


「数多いの? キリヤマの兵団」私が尋ねると、クラベは頷く。


「数は、銃で武装した従者が千人以上います。兵士はキリヤマを含めて22名です。特に、キリヤマの長男の、キリヤマレン、という兵士が、サダメ様と同じように例外呪物持ちの兵士です。僕の幼馴染なんですが、闘争の激しいこの地域でも指折りの兵士です」



「ふーん貴方の友達なのね」と私は相槌を打ちながら、周辺の従者に出立の準備を進めるよう指示を出した。


「レンも魔王の陣営の一人ですから」とクラベが私の後ろでぽつりとつぶやく。


「ねぇ、その魔王ってなんなの」と私はさすがに疑問に思っていたことを聞いた。


「魔王と私たちは生まれる前から連帯した集団です。それぞれ身分も才能も生まれも違いますが、お互いに集結し合って助け合います。使命について曖昧なもの、思い出せていないものもいますが、概ね仲間意識を共有した、魔王の陣営です」


魔王の陣営。闇の陣営。死後のアザラシ神の話とやはり似ている。


生まれつき仲間意識を持った集団、とでも解釈しておけばいいのだろうか。どうも宗教臭くて警戒してしまう。



クラベは言う「要するに、秘密結社と、その会長です。表向きはそれぞれ普通に生活しながら、いざというときは会長のもとへ集う、というだけの、秘密結社です」


「そうなんだ」

と答えながら、よけい胡散臭いな、と思って私はそれ以上聞くのをやめた。まぁ今はこの子の知り合いに頼るしかないから、あまり深く詮索しないことにしておいた。



この地域では歩兵と銃砲が従者たちの主力武器らしい。鉄剣で武装しただけの私たちの従者では分が悪い。

銃は鉄剣に比べて割と高価だから、兵士の戦力に重きを置く故国では、鉄剣が主体だったのだ。しかしこうも被害が多いと、銃の配備も考えなければならないかも、と考え始めていた。


関東の兵賊は戦術も兵装も進んでいる。


失敗した、兵賊の襲撃に勝利した後、銃砲を拾っておけばよかった。

次の襲撃があると思っていたし、荷物が増えるからと、先を急いだのが悔やまれる。


買えばいいと思っていたし、被害が大きかったから、早く集落に辿り着きたかったのだ。


出立すると、四日ほど進んでも兵賊からの襲撃はなかった。

時折何発か銃声があって、そのたびに臨戦態勢に入ったが、結局襲ってこないままだった。


前回の戦で、向こうの被害が大きかったのかと思ったが、二日経った頃には別の兵賊の支配圏に入っているのに、一向に襲撃がなかった。


事情通というクラベを呼んでそれを疑問として尋ねてみると、こう答えがあった。


「襲っても割に合わない敵、という認識が兵賊間で共有されたのだと思います。彼らは情報共有早いですから。加えてキリヤマの兵賊の配下、という噂をキリヤマ側が流しているようで、手を出していいのか判断できないのでしょう」


傘下に下ったつもりはないのだけれど、なんにしろ襲ってこないのは予想外で、非常に助かる。敵襲は必定だと思っていたから、休止の回数を減らして急がせていたので、一度中休止を取ることにした。



張りつめていた緊張がゆるんで、大きくため息をつく従者もいた。私は食事もこの時間に取ることにして、簡単な食糧一式を従者に取らせた。


おにぎり。と、パン。それでも嬉しそうに食料を積んだ荷車からそれらを取っていく。


私もパンを六つ手に抱えて、歩けなくなった従者たちのもとへ行って配った。


一人が申し訳なさそうに言う。

「お役に立てなくなり、足を引っ張ってしまっております。本当に申し訳なく思います」

と、自分より年上の従者が言う。


「従者はどうなろうと死ぬまで従者だよ。一生養うし、名誉の負傷をしたことに対する慰労金も出します。目的地に着いてからね。あなた達には今後戦ではなく事務で活躍してもらう。貴重な戦力だよ」


「必ず、お役に立ちます」従者たちは頭を下げた。


こんなこと言わなくても、兵家が負傷した従者の世話をするのは義務なんだけどね。それでも直接声をかけたほうが安心するだろうと思って、言うべきことを言った。


中休止の間、草むらに戻ってパンを齧ると、なんだか急激に眠くなってきた。しかし中休止も半ばを過ぎたから、いま寝たら起きるとき辛い。でも超眠い。むしろ眠ったまま死にたい。いや、でも、いま死んだらこいつらやばい。いまは死ねない。とかまどろみの中で考えているうちに、結局寝た。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ