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眠い。眠っていたい。体が空中にふわふわ浮いているよう。暗黒の暗闇が広がっている中で、星々が深海に浮かぶプランクトンのように光り輝いていた。本質は光。光があるから闇の中でも心地いい。


「こんにちは」


どこかから誰かの声が聞こえる。私は答えたくない。どうせまた甦れという話だろう。眠っていたい。もう起きていたくない。疲れて、息を吐いた。


「こんにちはー」


しつこく何度も挨拶を繰り返す声。うるさいから答えた。


「なに」


「僕はゴマフアザラシだよ。お姉ちゃん、死にすぎ」


私は面倒くさくなってきた。このまま死んでたほうがずっと心地いいし、幸せじゃないだろうか。


「今度はわたし何で死んだの」


「衰弱死だよ。生き返らせたとき体は全快させてあげたのに。お姉ちゃん、心弱いほう?」


「知らない」


疲れた。眠い。今回は生き返るのはごめんだ。そう思って私は無言でいようと思った。


「生き返る?」「生き返らない」


そう言葉を返して黙っていることにした。


「ゲームオーバー?」「そうだよ、死んだら神様に従う必要もないでしょ」なんとなく無視しがたくて、つい言葉を返してしまう。



「かみのいだいなるちからをしれ。生き返れー」


そして、目が覚めた。


目が覚めたら布団の上だった。あのアザラシ神こちらの願望聞く気ゼロですね。不意打ち的に生き返らされてちょっと腹が立ってきた。



目が覚めたら熱が引いていた。昨日まで寒気と体の痛みで酷かったのに、なんともない。実はすごい神なのかもしれない。


どうやらここは澤山の街道沿いにある宿のようだ。

ここ数日熱で朦朧としてて、ムツミ氏との会見の護衛には代理でムラキに行ってもらったのを覚えている。


妙に静かだ。


「あ、お嬢様」


アベが戸を不意に開けてぎょっとした顔をしていた。


「いま、心臓が止まってたので、医者が臨終を告げて帰ったところですが…」


「生き返らされた。それより出立するから。休みすぎた。通行の許可が出ただけでここは友邦の国じゃない。すぐに出るよ」


わたしは寝起きで苛立っていたので、余計な反応をされたくなくて用件だけ伝えた。


しかもなんか白装束に着替えさせられてるし。


「不死身ですか? 泣く準備をしてたんですけど…」「あっそ。着替えるから早く出て行って」


アベを退出させると、自分の私服に着替える。これ葬儀の後だったらさすがに生き返るの無理だったんじゃ。


燃やされてる最中に甦らされたらどうなってたんだろう、とか、怖い想像をしつつ、身だしなみを簡単に整えて外に出た。


年上の従者の中には泣いている者もいたが、そんなに慕われていただろうか、と自分で今までの生き方を自省しつつ、護衛の部隊を出立させた。ちなみに馬車はムツミ氏の好意で提供を受けていたので、以前のよりちょっといい馬車になっていた。


しかし私の死は、状況を多少混乱させたらしい。


私の死の報告が周囲に伝わるのと前後して、ムツミ氏がつけてきた護衛隊が急に引き上げ、向こうから長期に滞在するように何度か勧告が来たらしい。


理由を聞くと、関所付近で夜盗の出没があった、とか、出国のための隣国との調整がつかない、とか、もっともらしいが理由が二転三転して要領を得ないらしい。


私はそれを無視するように指示して、さっさと国境に向かうことにした。

いざとなれば国境の関所くらい押し通れるし、向こうの意図がこちらを取り込もうという意図が見え隠れしているような、嫌な感じがしたからだ。


報告を何度も無視をしていると、その後ムツミ氏からの接触はなく、国境もあっさり通れた。


国境を通るとき、関所の人間がまじまじと私の顔を見て言った。

「お加減が優れないと聞いておりましたが、回復していたようで安堵いたしました」

関所を守る指揮官の兵士らしい。思いっきり作り笑いの感がした。

「ありがとう、貴方も健祥で。病は突然来ますから」と返した。


それから何事もなく関所を通過すると、関所のほうから大声で、「早くくたばれ魔女!!」と言われた。あの指揮官の声だ。同時に嫌な笑い声が聞こえる。私は聞こえないふりをして馬車の中で目を閉じて寝たふりをしていた。


ムラキが隣で呟く。

「あいつら絶対サダメ様にびびって軍を動かせなかったんですよ。ムツミがなにか行動を起こそうとしてたのは目に見えてました」


「兵士の中で敵から通称がつくのは名誉なことです」とササキが同調して言う。


「反応しなくていいから。いい馬車もらったし」と私は言う。


「フクハラで魔女を見たら逃げろ。必ず殺される。…ウケるのはムツミのやつら、冗談じゃなくて本当に従者にそう言って教練させていることですよね。よっぽど怖い思いをしたのか」


アベが一人でツボに入ってるのか笑っている。


私は「うるさい」と言って黙らせながら、眠ったふりをしていて本当にその内寝てしまった。



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