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起きて出発するころ、朝焼けが森を照らす。

正直寝ている間に敵との遭遇があるかもしれないと考えていたが、私の予想に反して追撃の部隊は来なかった。

竜騎兵を運用するのはコウベ氏始め北部の国々に多いから、恐らくコウベ氏は裏切ったのだろう。

なぜだろう。いくら瑞葉の呪物が特品込みの超貴重品だとしても、百年の盟邦を裏切ってまで欲しくなる代物だろうか。


どうも動機が納得いかなかった。


しかも追撃もなく私たちを取り逃がしているし。欲しいのは瑞葉じゃなく、この国の領土なのだろうか。


森を抜けて東部の街道へ至るには二日かかった。


騎兵を一騎使って早馬をムツミ氏へ出した。東のムツミ氏に何の折衝もなく突然通過することはできない。ムツミ氏には領土通行許可をもらいたい。

ムツミ氏の領土を通行して関東圏へ入れば、敵も追ってこないだろうし、新たな亡命先も見つけられるかもしれない。旧帝都周辺都市なら、落ち延びた国主やら貴族やらが結構住んでいると聞くし。


そのためにムツミ氏の領土を通行する必要がある。そのための交渉をムツミ氏の領土である澤山に着くまでに、まとめておきたいと思った。


騎兵が戻って来て、向こうが提示した条件を述べた。


大身である大王家の領土通行のためには、その身柄の安全を保障するために瑞葉とムツミ氏の関係の構築が不可欠であるとのこと。


大王家の通行を格別、かつ特別に認めるためには、ムツミ氏と大王家との関係性を明確にしておかねばならないとのこと。


ムツミ氏と瑞葉様の関係を周辺の国々へ示すためには、上下の恩顧の間柄を近しく示すべきとのこと。


つまりなんかよこせ、とのことだった。


そのうえで瑞葉とムツミ氏との親戚関係の掲示の許可と、遠縁であるがゆえに瑞葉の保護を提案している。


これは、既成事実として、遠い祖先において、瑞葉とムツミ氏が血の繋がった家系であることを認めてほしい、という謎提案だった。

血の高貴さを高めたい、ということだろうか。


その提案を飲めば、通行許可だけではなく、瑞葉の安全をムツミ氏で保証する、という提案だった。


それは瑞葉様とムツミ氏が親戚であるので、保護する、という大義のためだと補足説明された。


悪くない提案だが、当の瑞葉様がそれを断った。

親戚関係を結ぶと、今後の瑞葉の行く末にとって都合が悪い、という話だった。


突き詰めて聞くと、娘とムツミ氏の婚姻を懸念しているらしい。


私も通行許可さえもらえればいいという考えだったので、血のつながりについてはやんわりと否定し、代わりに二品等の呪物をムツミ氏へ賜り、「国体」への参加のための交渉の橋渡しをする、という提案をしてみた。


国体は領土を持たない政治組織だが、国体に興味を示し、参加している国主は多々いる。


その目的は簡潔に言えば、全国の国主による緩やかな政治連合である。


それへの参加を促す、というのは、多くの国主との国交が開けるし、悪い話ではあるまい、という意味での提案だった。


瑞葉様は二品等の呪物のムツミ氏への下賜を躊躇ったが、澤山さえ抜ければ関東への道が開けるのと、敵国が迫ってくる時間のなさを考えれば、相手への即決を促したい形だった。


案の定その提案を騎兵に伝令を頼むと、二日ほどですぐに返事が来た。


領土の通行を歓迎する旨、大王家の守護者としての安全の保障、瑞葉様との謁見の希望、道中の宿の手配、護衛の付与、などであった。


謁見と護衛の付与は面倒くさいので断りたいところであったが、断るとさすがに心証を悪くするので、全てについて礼を持たせて、騎兵をムツミ氏へ向けた。


なので澤山との国境の関所は容易に抜けることができた。



そのころ合いから私は熱を出して、馬車に引きこもった。瑞葉様の護衛代表として、ムツミ氏との交渉には代理にムラキを立て、私は道中ずっと熱でうなっていた。


本来こんな長旅をしたことがなかったから、無理がたたったのかもしれない。宿につくと死んだように布団に横たわり、自分でもよくわからないうなり声を出しながら、ずっと横になっていた。


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