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5「誰にでも優しい君が、誰にも興味がないことを、誰であろう僕だけが知っている」


***


 ひなせは、きっと昔に多くのことを懐疑して否定して相対化したのだろう。それから逆に、肯定することで自分を再構成した。対象化すると簡単だけれど、そんなことでひなせを表現できるとも思わない。


 無謀で向こう見ずなタイプではないのに、理論は勇敢で積極的だ。彼女は何かを証明することには無頓着なのに、何かを想像することには命をかけている。


 その想像力はもっぱら人間関係に適用されていて、それが僕には実に滑稽に思えた。


 彼女は他人に興味がないということを、自分に言い聞かせている。そのために人に優しくする。まるで首尾一貫していないと「気持ちが悪い」とでも言うように。


 物語は物語のために筋を作る。ひなせは、この世界が逸脱のない意味に包まれていて、首尾一貫していると思っているはずだ。


「ひなせだって、恋愛はするでしょ?」


「恋愛の形に優劣はあるかな?」


 ひなせは僕に聞いてきた。「良い恋愛と、悪い恋愛があると思う?」


「あるよ」


「私はないと思う。恋愛は空気のように地上には遍在しているから」


「つまらないと思わない?」


「思わない。そういうゲームのルールだから。つまらないとするなら、人生を歩むのに不適格でしょうね」


「不適格な人、多くない?」


「少なくとも、私は恋愛するのは好きだし、それを楽しむこともできる。霞は?」


「文学の中の話だと思っている」


「つまり私と同じで、わからないんでしょ?」


「わかるとわからないの境界ってなんだろう?」


「少なくともそこに境界はないよ。わかるのは確率や割合でしかない。何割わかっていて、何割わかっていないみたいな、汽水域のようなもの。確証を得たいと思ったら、んー、何をすればいいのかな。私は確証を得たいとは思わないし、それはこのゲームをとてもつまらなくさせる気がする」


「恋愛についても同じ? ゲームだと思う?」


「一面的にはね。特別でないものを特別だと言うことに私は抵抗がある」


「なんで、ひなせは、恋愛をするの?」


「理由はないよ。意味づけする必要を感じない。呼吸と一緒」


「それは、嘘じゃない?」


 ひなせは笑って首を振った。


「答えがない問題を考え続けることはできない。答えは暫定的なものにならざるを得ないし、知ったところで意味はない。知ることは、諦めることとほとんど一緒だから」

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