#01
「おはよう霊夢」
「おはよう、今日は早かったわね」
「あぁ…フランと遊ぶ約束があるからな」
「あー…言ってたような気がするわ」
「気がするって…まぁいいや。昨日の夜食べてなかったから腹減ってるわぁ…」
「もう作ってあるわよ」
「それは助かる」
そう言いながら俺こと天月空はご飯の前に座る。
そして目の前にいるのが博麗霊夢。この幻想郷の博麗神社で巫女をしている人だ。まぁ…普段の霊夢を見てるとあまり巫女らしくはないが…というのは黙っておこう。
「いただきます」
俺は霊夢が作った料理を食べ始める。
「ん、今日も相変わらず美味いな」
「そう?まぁ美味しいって言われて悪い気はしないわね」
「いつも美味しいって思ってたが…昨日食べてないからかより美味しく感じる」
「お世辞だとしても嬉しいわ」
「お世辞じゃねぇよ」
「ご馳走様でした」
「お粗末様〜。片しとくわね〜」
「わかった。俺はもう少ししたら紅魔館に行くから」
「わかったわ。」
そのような会話をする。ちなみに、俺は霊夢に居候させてもらっている。どうやって居候らさせて貰ったかって?そうだな…みんなが思ってる感じだ。この巫女は金に弱い。
「さて…紅魔館に行きますか。」
俺がそう言った瞬間、俺の見ている世界が光に包まれる。
「なんだ…これ…?」
俺はこの状況を見た事…いや、読んだことがある。
そう、漫画でいえば異世界召喚、または異世界転生だ。
「せっかく人が楽しんでるってのに…!また別の世界に行かなきゃ行けないのかよ…!」
俺が言い終えたあとには、その部屋には誰もいなかった。
「いっつつ…ここは…」
俺は辺りを見回す。周りは白色に包まれている。
「よく来てくれました。勇者様方」
その声の方向を見る。するとそこにはいかにもな女神様がいた。しかし俺はどこか引っかかっていた。
「勇者様…方…?」
俺は今一度周りを見る。どうやら俺以外にも人は居るようだ。嫌な予感を覚えた。
「あなた方…勇者様一行に、世界を救って欲しいのです。」
「ちょ…これって異世界召喚ってやつか!?」
すると、興奮してるような声が聞こえた。
「マジかっ!ついに異世界に行けるのかぁ!」
「落ち着きなさいよ竜也っ!」
「この状況で落ち着いていられるかよ三玖!」
(リア充かよ)
真っ先に俺はそう思った。俺の予感が正しければ…
「あら?」
女神様は俺に視線を飛ばす。やはり……
「私が召喚した勇者は2人なはずなのだけれど…」
予感が的中してしまった。つまりこれは……
「巻き込まれ召喚かよっ!!」
いつもはこんなに苛立たないはずなのに今は猛烈に苛立っていた。だってそうだろ!フランと遊ぶのを邪魔されたんだぞ!?怒らないわけないだろ!
「はぁ…じゃ俺は帰らせてもらいますよ」
「だ…ダメですっ!」
「………は?なんで?」
「……呼び出された者は自分では帰れないんです…これは掟で決まっているんです!」
「は?巻き込まれた上に帰れない?ふざけんなよっ!」
苛立ちが止まらない。
「俺はあの世界が気に入ってたんだ!やっと居場所が見つけられたんだ!なのに……!」
「………ごめんなさい」
「じゃあとっとと俺を元の世界に戻してくださいよ。女神様なら出来ますよね?」
「そ…それが…私は召喚した時に膨大な魔力を使ってしまって…」
「はぁ!?それで帰せないってか!?」
「………はい」
「はぁ〜………」
俺は呆れてため息をつく。なんでよりによって俺がこんな事に巻き込まれなきゃ行けないんだよ。
「おい、落ち着けって」
竜也と呼ばれたやつが話しかけてくる。陽キャかよ。
「いいよなぁお前らは。大事な人と来れてさぁ!俺なんて独りだぞ?しかもあの世界に置いてきちまったんだぞ?」
「で、でもさ…!新しい世界で仲間を見つければいいじゃん!」
「は?仲間を見つける?何言ってんだお前。お前は陽キャだからそう言えるんだろ。俺は陰キャなんだ。知らない世界で、知らない土地で仲間を見つけられるわけないだろ。少しは俺の気持ちにもなれよ」
そいつは黙ったまま、後に退いた。
「ゆ…勇者様方にはこちらの世界に行ってもらいます。」
女神様はその世界を画面のようなものに映し出す。
まぁ、映し出したところでなんだが。
「では最後に、あなた方にスキルを配ります。好きなスキルを選んでください」
スキル…能力のようなものだろう。ただ、俺にはそんなものは要らない。使いたくない。
「俺はこれにするぜっ!」
「私はこれっ!」
と盛り上がってる2人。呑気でいいよな。
「これ選ばなきゃ行けねぇのか?」
「は…はい」
「はぁ〜………じゃあこれでいいよ」
俺はそのスキルを選ぶ。本当は使いたくなかったが、これは持っていたら便利そうだということで選んだ。
「ではよい異世界ライフを〜」
そして俺の目から白い光は消えていった………。