第5話 盗まれた資産!暗躍する影のフィッシャー
サクシュの町で「時を奪う者」との死闘を終えた俺たち勇者パーティーは、
ようやく自由な時間と健全な働き方を取り戻し、資産運用と副業の両立にも慣れてきていた。
ハイレとランスは町のパン屋でコツコツ働き、ブリジットは節約術や家計管理ノウハウをブログに綴り、アフィリエイト収入を僅かだが得ている。
俺も投資と日々の管理を怠らず、パーティーの資産はゆっくりだが確実に増えていた。
――
そんなある朝、町の広場がざわついていた。
「ちょっと!私の銀行口座、昨日から残高が減ってるの!」
「俺の投資口座も、見覚えのない引き落としが……」
「パン屋の売上金も、なぜか足りないんだ!」
住民たちが口々に訴え、町役場には苦情が殺到していた。
「これは……普通じゃないな」
ランスが眉をひそめる。
ハイレがパン屋の主人に話を聞きに行くと、
「昨日の夜、パン屋の売上管理アプリに[認証が必要]ってメールが来て、言われるままにパスワードを入力したら……」
「それ、まさか……」
ブリジットが青ざめる。
「これはフィッシャーの仕業だ」
ランスが険しい顔で言う。
「最近、この界隈で資産を狙う闇組織[影のフィッシャー]が暗躍しているという噂がある。
やつらはネットや魔法の通信を使い、巧妙に情報を抜き取って資産を盗むんだ」
「フィッシャー……釣り人って意味だよな?魚じゃなくて、みんなの資産を釣るってか!」
ハイレが悔しそうに拳を握る。
「しかも、フィッシャーは見えない負債も残していく。
不正送金の借金、情報流出による信用低下……資産だけじゃなく、未来のリスクまで背負わされるの」
ブリジットの声も震えている。
俺たちはすぐに対策会議を開いた。
「まずは被害状況を整理しよう。どの口座から、どのタイミングで、どんな手口で抜かれたか」
ランスが住民たちの資産履歴を分析し始める。
「パン屋のバイト代も、数百ベルずつ消えてる……」
「ブログの広告収益も、なぜか“未払い”になってる……」
「投資口座も、謎の引き落としが……」
住民たちが次々と被害を訴える。
「これは魔法のフィッシングメールだな」
ランスが一通の怪しいメールを見せる。
口座認証のため、こちらのリンクをクリックしてください――
「このリンクを踏むと、偽の銀行サイトに誘導され、IDやパスワードを盗まれる仕組みだ」
「やられた……昨日届いたメールにうっかり……」
パン屋の主人が頭を抱える。
「でも、まだ間に合う!被害を最小限に抑えるには、すぐにパスワードを変更しよう!2段階認証も設定だ!」
ランスの指示で、住民たちは慌てて各種手続きを進めた。
しかし、影のフィッシャーは一筋縄ではいかなかった。
夜になると、町の広場に不気味な影が現れる。
「資産を返してほしければ、我らの試練をクリアしてみせろ」
黒いフードを被ったフィッシャーたちが、住民たちを挑発する。
「これは放っておけないな」
俺は剣を握りしめ、仲間たちと共に立ち上がる。
最初の試練は、「偽サイト迷宮」。
無数の扉が並ぶ部屋で、本物の銀行サイトにたどり着かないと、資産がさらに減っていく。
「こっちのサイト、ロゴが微妙に違う……!」
「URLが“https”じゃなくて“http”になってる!」
「問い合わせ先がやたらとフリーダイヤル……怪しい!」
ランスの冷静な分析とブリジットの観察眼、ハイレの直感も合わさり、
俺たちは次々と偽サイトを見破って進んでいく。
二つ目の試練は、「情報流出の罠」。
魔法の水晶球が並び、「SNSで自分の資産自慢をした者は、負債を背負う」と書かれている。
「ここは慎重に、個人情報は絶対に出さない!」
「SNSの投稿も、公開範囲を限定しよう!」
「うっかりパン屋のバイトで月収◯◯ベル!なんて呟いたら、また狙われるぞ!」
全員で声を掛け合い、誘惑を断ち切る。
そして、最終試練。
広場に現れた影のフィッシャーのボスは、
巨大な釣り竿と闇のネットワークを操る魔物だった。
「お前たちの資産も、未来も、ぜんぶ釣り上げてやるよ……!」
「させるか!」
俺は剣を構え、バトルが始まる。
フィッシャーの放つ「フィッシングフック」は、当たると資産が一気に引き抜かれる呪い。
「オルカ、右から回り込んで!」
「ハイレ、パン屋仕込みの素早い動きで囮になって!」
「ブリジットはブログ仕込みの情報防御魔法を!」
仲間たちの連携で、俺はフィッシャーの本体に迫る。
「これが、俺たちの情報リテラシーだ!」
剣を振り抜き、闇のネットワークを断ち切る。
フィッシャーは断末魔の叫びとともに消滅し、
盗まれた資産と、見えない負債の一部が町の住民たちに戻ってきた。
「やった……!」
住民たちは互いに顔を見合わせ、安堵の息をつく。
「でも、資産管理と情報防御は、これからも油断できないわ」
ブリジットが真剣な顔で言う。
「副業も投資も、リスク管理が大事だな」
ハイレが頷く。
「これからは、二段階認証と定期的なパスワード変更も徹底しよう」
ランスが決意を新たにする。
こうして俺たち勇者パーティーは、
影のフィッシャーとの戦いを通じて、
資産と負債、そして情報の大切さを改めて町の人々と共有したのだった。
魔王ジミン討伐への道は、まだまだ続く――。