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第4話 時を奪う者との戦い 〜サクシュ社・ブラックの迷宮〜

俺たち勇者パーティーは、地味なモンスター討伐で得たわずかな資産と負債を抱え、次なる町サクシュを目指していた。

 サクシュの町に着くと、空気がどこか重い。

人々の顔は皆、魂が抜けたように疲れ切っている。


時計台の針はやけに早く回り、街の掲示板には「高給!未経験歓迎!やりがいあり!」の求人がずらりと並んでいた。

 「なんか、ここ……やばい空気だな」

 ハイレが町の様子を見てつぶやく。

 「みんな、まるでゾンビみたい……」

 ブリジットも眉をひそめる。

 しかし気づけば俺たちは、求人に釣られてサクシュ社という会社の面接を受けていた。

 「採用だ!明日からすぐ来てくれ!」

 ブラックスーツの男が満面の笑みで俺たちに名刺を差し出す。

 「やったな、オルカ!俺たちもついに安定収入だ!」

 ハイレが嬉々として握手する。

 

――


だが、サクシュ社の現実は甘くなかった。

 「今日のノルマは100件!終わるまで帰るな!」

 「昼休み?そんなものはない!」

 「休日出勤はサービスだ!社会人なら当然だろ!」

 低賃金みなし残業80時間込み、賃金なしのサービス休日出勤――

 ブラック企業の地獄が、俺たちを待ち受けていた。


 「オルカ、もうダメ……」

 ブリジットは目の下にクマを作り、


 「俺、昨日から何時間働いてるんだ……?」

 ハイレは書類の山に埋もれている。

 ランスだけは、冷静に現状を分析していた。

 「これは……時を奪う者の仕業だ。サクシュ社そのものが、時間搾取型ブラック企業モンスターだ」

 

俺たちの資産は、毎日少しずつ増えている。

 だが、それ以上の速さで――健康の減耗、自由時間の消失、心の余裕が減っていく。

 みなし残業80時間を超える働き方は、もはや違法の領域。

 休日出勤もサービス扱いで賃金はゼロ。

 

【過労死ライン】と呼ばれる月80時間超えの残業が、俺たちの命と未来をじわじわと削っていく。

 「このままじゃ、俺たち本当に“社畜”になっちまう……!」

 俺は机に突っ伏しながら呻いた。

 そんな絶望の中、ランスがこっそり囁く。

 「オルカ、労働基準法って知ってるか?

 この世界にも、働く者を守る法が存在する。

 そして、今は副業という切り札もある」

 「副業……?」

 俺はかすかな希望を感じる。

「会社は社員を一方的に全て縛れるわけじゃない。

 労働基準法第32条――1日8時間、週40時間を超える労働は違法。

 みなし残業80時間なんて、完全にアウトだ。

 副業・兼業も、ガイドラインでは原則認める流れになっている。

 俺たちの時間を取り戻すには、法と知恵で戦うしかない!」

 翌朝。

 俺たちはブラック上司の目を盗み、サクシュ社のタイムカードを証拠に記録。

 「これで、違法な長時間労働の証拠はバッチリだ」

 ランスがニヤリと笑う。

 

そして、俺たちは副業作戦を開始。

 ハイレとランスは町のパン屋でパン作りと配達のバイトを始め、

 「副業しないのは時代遅れだぜ!」とハイレはパン生地をこねながら叫ぶ。

 

ブリジットは自分の得意な節約術や家計管理ノウハウをブログに書き、アフィリエイト広告で収益を得る。

 「ブログもまだまだ稼げる時代よ。私の節約術、みんなに役立ててもらうわ!」

 (2025年の今もアフィリエイト市場は拡大し、SNSやAI活用、独自性を活かせば十分収入源になるといわれている)


 サクシュ社のブラック上司は怒り狂い、

 「副業だとぉぉぉ!我が社ではたらけえぇぇ!」

 と叫ぶが、

 「労働基準法違反は犯罪です。副業もガイドラインで認められています」

 ランスが冷静に反論。

 

町の人々も次々と副業を始め、

 サクシュ社の時を奪う者の力は目に見えて弱まっていく。

 ついに、ブラック上司の正体が現れる。

 黒いスーツが破れ、中から巨大な時計の化け物――時を奪う者が姿を現した。

 「お前たちの時間を、もっともっと搾り取ってやる……!」

 「させるか!」

 俺たちは立ち上がり、バトル開始。


 時を奪う者は、巨大な時計の針を振り回し、

 当たると1日分の自由時間が消し飛ぶ呪いをかけてくる。

 「オルカ、気をつけて!あれは複利の逆!負債が雪だるま式に増えるよ!」

 ブリジットが叫ぶ。


「だったら、俺が囮になる!」

 ハイレが果敢に前に出て、魔物の針を受け止める。

 「今だ、オルカ!」

 ランスが叫び、

 俺は[副業]の一閃で魔物の心臓部――時計の中心を斬り裂く。

 時を奪う者は断末魔の叫びを上げ、

 サクシュの町に正常な時間が戻った。

 「やった……!俺たち、ブラック会社から抜け出せたんだな」

 俺は全身の力が抜けるのを感じた。

 「副業も、法の知識も、俺たちの時間と人生を守る武器だ」

 ランスが静かに言う。

 「これからは、資産も時間も、仲間と一緒に大切に積み上げていこう」

 ブリジットが微笑む。

 「もう社畜には戻らねぇぞ!」

 ハイレが拳を突き上げる。

 

こうして俺たち勇者パーティーは、

 サクシュの町で時を奪う者と戦い、

 ブラック企業の呪いから自分たちと町の人々の時間を取り戻した。

 魔王ジミン討伐への道は、まだまだ続く――。

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