番外編 センキョの迷宮と投票の一閃!
王都ベルクスの広場に、突如として現れた謎のダンジョン――その名も「センキョの迷宮」。
巨大な投票箱と「勇者よ、己の一票で未来を切り開け!」という看板が、いやにギラギラと輝いている。
「なんだこの迷宮……センキョって、あのセンキョか?」
俺――オルカは、パーティーの面々と顔を見合わせた。
ハイレは興味津々で投票箱を覗き込み、ブリジットは眉間にしわを寄せている。
ランスは冷静に迷宮の説明書きを読み上げた。
「どうやらこのダンジョン、投票で進む道が決まる仕掛けらしい。
正しい選択をすればご褒美、間違えれば罰ゲーム。まさにセンキョの縮図だな」
「面白そうじゃねぇか!俺の一票で伝説を作ってやるぜ!」
ハイレがやる気満々で先頭に立つ。
迷宮の最初の部屋には「増税か減税か」というお題と、
YES/NOの投票箱が二つ並んでいた。
「どっちに入れる?減税なら手取りが増えるし、増税なら社会保障が……」
俺が悩む横で、ハイレが即決で「減税」に投票。
「おい、ハイレ!よく考えろよ!」
ブリジットがツッコミを入れる。
「だって、手取り増える方がいいだろ!」
ハイレは悪びれもせず親指を立てる。
ランスが静かに分析する。
「短期的には得だが、長期的には財政難でサービス低下のリスクもある。
だが、ここは[国民感情]を読むのが正解かもな」
結局、俺たちも流されて「減税」に投票。
すると投票箱が光り、扉が開いた。
中には「一時的な臨時収入」と書かれたベル袋と、「将来の財政赤字」と書かれた借用書が入っていた。
「やっぱり負債もついてくるのかよ!」
俺が突っ込むと、ブリジットがため息をつく。
次の部屋では「人気センキョで選ばれたモンスターとバトルせよ!」と書かれている。
壁には歴代の人気モンスターのポスターがずらり。
「俺はゴールドドラゴンに一票!」
ハイレが即決で投票。
「ちょっと待って!ゴールドドラゴンは資産も多いけど、負債もたぶん莫大よ!」
ブリジットが必死に止めるが、ハイレはもう投票済み。
「まあ、これも民意だな」
ランスが苦笑する。
投票の結果、ドラゴンが出現。
[サラ金]という高金利で借りた金を使い、
黄金の鱗を移植手術した巨大な[見栄の塊]ゴールドドラゴンが、センキョの迷宮に咆哮を響かせる!
「出たな、伝説の人気モンスター!」
俺は剣を構え、パーティー全員が戦闘態勢に入る。
「オルカ、右から回り込め!」
ランスが冷静に指示を出す。
「ハイレは正面から引きつけて!」
ブリジットがサポート魔法をかける。
「任せろ!センキョの力、見せてやるぜ!」
ハイレが勇ましく突撃し、ゴールドドラゴンの炎をギリギリでかわす。
俺は隙を突いてゴールドドラゴンの鱗の隙間に剣を突き立て、
ランスが弱点を的確に指示、ブリジットが回復と補助を絶やさない。
「これで決める!投票の一閃!!」
俺たち全員の力が一つになり、剣がまばゆい光を放つ。
その一撃がゴールドドラゴンを貫き、ついに撃破!
ドラゴンは消え、莫大な資産ベルと同時に、「巨大な負債(サラ金ローン・食費・住居費など)」の山が残された。
「派手なモンスターはやっぱりリスクがデカいな……」
俺は汗を拭いながらつぶやいた。
――
迷宮の最深部には「未来を託す一票を投じよ」という投票所。
選択肢は「短期的な利益」か「長期的な成長」か。
「俺はやっぱり目先の利益!」
ハイレが即投票。
「私は長期的な成長!」
ブリジットがきっぱり。
「投資もセンキョも、未来を信じて選ぶものだ」
ランスが静かに「長期的な成長」に投票。
俺も迷わず「長期的な成長」に一票を投じた。
投票箱がまばゆい光を放ち、「投票の一閃!」というスキルがパーティー全員に降り注ぐ。
「これが、みんなの意思の力……!」
俺は胸の奥が熱くなるのを感じた。
迷宮の外に出ると、王都の空はすっかり夕焼け色。
俺たちはそれぞれの一票の重みと、資産と負債の現実を胸に、
また一歩、魔王討伐への道を進み始めたのだった。