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第22話 後編 ―突破せよ!資産防衛の壁―

「順番はこうだ。まず俺が出る。そのあとブリジット、ハイレ、オルカの順に」

ランスの言葉に、誰も異を唱えなかった。

国民の森の奥深く、俺たちの前に立ち塞がるのは、七体の支出モンスター。

それぞれが家計の難関を象徴する、禍々しい存在だ。


森の空気は張り詰め、モンスターたちは不敵な笑みを浮かべてこちらを見下ろしている。

「この順番で挑めば、それぞれの得意分野と経験が活きる。

いいか、これは資産を守る戦いだ。遊びじゃないぞ」

ランスの声に、俺たちは静かに頷いた。

今ここで敗れれば、俺たちの未来も、家族の幸せも、全てが霧散する。

資産形成の本当のバトルが、今始まる。


【第一の壁】《カゾクノフエルゾーン》


「ふん、あのガキ共にわかるはずがない」

最初に立ち塞がったのは、巨大な鎧をまとった支出の巨人。

その名もカゾクノフエルゾーン。

家族が増えるたびに体が膨れ上がり、両手には「教育費」「食費」「医療費」の大剣を握っている。

「おい小僧、貴様に家計の重みが耐えられるか? 子どもが増えれば支出も倍増。生活防衛資金100万ベル? ははは、甘すぎるぞ」

「ふっ……俺を誰だと思ってやがる」

ランスが静かに一歩踏み出す。

腰に差した家計バランスブレードが抜き放たれた瞬間、空気が一変した。

刃が煌めき、支出の爆風を打ち払いながら一直線に突っ込む!

「家族が増えるのは喜ばしいこと。だが、それに見合う生活防衛資金がなければ、万が一の場合一瞬で破綻する」

「――緊急予備費・拡張陣、発動!」

ランスの足元に魔方陣が展開。

独身時代の5ヶ月防衛100万ベルから、家族人数に応じて増加する12ヶ月分400万ベルの資金が盾となって回転する!

カゾクノフエルゾーンが「教育費の大剣」を振り下ろす!

だが、ランスの家計バランスブレードが受け止め、緊急予備費・拡張陣の盾が支出の波を吸収!

「耐えろ……これが、守る力だッ!!」

ランスの斬撃が巨体を貫き、ゾーンの体が崩れ落ちる。

第一の壁、撃破。


【第二の壁】《シャリョウクライマー》


「カッカッカ! マイカーってのはなぁ……男のロマンだろォォ!?」

次に現れたのは、タイヤの脚を持つ鉄騎獣シャリョウクライマー。

エンジン音と共に、ガソリン代・車検・保険・ローンの札が体中を覆う。

「……それ、必要性から逸れていますわね」

現れたのはブリジット。

手に持っていた魔法の杖が変化する……コスパリティ・スティレット。

鋭く、無駄なく、美しい一撃を生む短剣だ。

「維持費・税金・車検・保険。全部計算してから語ってくださる?」

「くっ……しかし! 子どもができればマイカーは必須だろうが!」

「だからって新車をローンで買うのはただの罠。中古で充分。むしろ余剰資金を資産運用にまわせるわ」

クライマーが《ローン縛りの鎖》でブリジットを縛ろうとするが、

スティレットが空間を切り裂き、クライマーのタイヤを断ち斬る!

「見積もりの舞踏シミュレイト・ダンス!」

キレのある数字の刃が舞い踊り、モンスターの装甲が紙のように散る!

クライマーが《ガソリン炎上波》で反撃するが、ブリジットは燃費最適化バリアで炎を無効化。

「コスパの力、侮らないで!」

第二の壁、撃破。


【第三の壁】《イノチノケイヤクシャ》


「私は家族を守る正義の契約者……おまえはそれを断れるのか?」

現れたのは、契約書の鎧をまとったイノチノケイヤクシャ。

「万が一」の札を振りかざし、次々と高額な保険契約を迫ってくる。

「……あんた、俺にそんな正義はいらねえ!」

ハイレの目に、珍しく真剣な光が宿っていた。

彼の手に握られているのは、燃え盛るバーベキュー串リテラシー・ランタン。

「光を当てるだけで、ムダな契約が炙り出されるんだよ」

「高額療養費制度、知らないのか?」

ランタンが照らした瞬間、モンスターの背中に複雑な保障項目と手数料の文字が浮かび上がる。

ケイヤクシャが《情弱洗脳ビーム》を放つが、ハイレは情報リテラシーシールドで跳ね返す!

「てめえの万が一の話、俺には通用しねぇよォ!」

光の一撃が直撃し、モンスターは哀れな悲鳴と共に霧散した。

第三の壁、撃破。


【第四の壁】《レジャーガルゴン》


「楽しまなきゃ生きてる意味がない……使え、もっと使えぇぇ!」

現れたのは、煌びやかな衣装を纏ったレジャーガルゴン。

手には「娯楽費」「旅行費」「外食費」の札がぶら下がっている。

「そう言って、通帳を石にするのがあんたの仕事だろ」

俺が肩からぶら下げたのはサブアカウント・シールド。

「レジャー費は楽しむための特別枠。本体口座を攻撃してもムダだぜ?」

「く……おまえ、貯金と娯楽を……分けて管理しているだと!?」

ガルゴンが《石化の視線》を放つ!

だがサブアカウント・シールドが視線を弾き返し、俺の資産はびくともしない。

「そりゃそうだろ。それが幸福と継続の分離投資ってやつさ」

ガルゴンが《浪費の誘惑ダンス》で俺の理性を揺さぶるが、

俺は《目的別積立バリア》を展開!

「シールド・ブレイク! ガキの笑顔は、この管理の先にあるんだよォォ!」

俺の一閃で、ガルゴン爆散!

第四の壁、撃破。


【第五の壁】《ミエノグレムリン》


「他人と比べろ、見栄を張れ。君は後れを取っているぞぉぉぉぉ!!」

現れたのは、虚飾の仮面を被ったミエノグレムリン。

周囲に「SNS映え」「ブランド品」「最新家電」の幻影を撒き散らす。

「うるせえよ、他人の人生に口出すな!」

ハイレが再登場。

グレムリンの囁き攻撃が四方八方から飛んでくるが、ハイレはオレスタンダード・バンドを額に巻いていた。

「これはな……自分の価値観で生きるための結界だ!」

グレムリンが《嫉妬の幻影》で俺たちの心を揺さぶるが、

ハイレのバンドが光り、囁きが霧散。グレムリンは耳を塞ぎながら消えた。

第五の壁、撃破。


【第六の壁】《ジュウタクオーガ》


「夢のマイホーム……そして、定年過ぎてまで労働確定35年ローンの檻に入れ!

80歳まで地獄の懲役50年ローンもいいぞ!

それでも足りなきゃ限界突破爆散濃厚ペアローンだ!」

現れたのは、巨大な家の鎧を纏ったジュウタクオーガ。

背中には「住宅ローン」「固定資産税」「修繕費」の札が揺れる。

「夢を見るのは勝手!でもね、現実はこっちにあるの!」

ブリジットが再登場。今度はキャッシュフロウ・ボウを構えていた。

「慎重な場所選び、価格の見極め、返済シミュレーション……全部撃ち抜く!」

オーガが《ローン地獄の鎖》で縛り上げようとするが、

ブリジットの三本の矢がモンスターの甘い見積もりを射抜く!

「『固定費・軽減ショット』!」

オーガが《リフォーム爆弾》で反撃してくるが、ブリジットは将来設計シールドで受け流す。

「現実を見据えた家計管理、それが未来を守る力よ!」

オーガが崩れ落ちる。第六の壁、撃破。


【第七の壁】《ニバリキノワナ》


「共働きでようやく生活成立……それが現実さ。どちらかが倒れれば、君たちは終わる」

現れたのは、二つの顔を持つワナの魔物。

片方は「共働きの安定」、もう片方は「片働きの危機」を象徴している。

「……だからこそ、片方でも回る家計を組む。それが防衛だ」

最後にランスがもう一度前に出た。

「おまえの言う現実は、リスク管理ができていないだけだ」

ワンパーソン・プランニングの魔法陣が展開。

片働きでも家計が黒字になるよう最適化されたシミュレーションが空中に現れる。

ニバリキノワナが《収入減少ブレス》で攻撃してくるが、

ランスは生活防衛資金バリアを最大展開!

「家計における戦略は、攻めだけじゃない。守りもだッ!」

渾身の突きで、ワナを粉砕!

七つの壁――すべて撃破!


「……終わったか」

「終わったな」

全員が肩で息をしていた。気づけば、空は少しだけ明るくなっていた。

「思ったよりきつかったな……資産形成って」

「でも、踏ん張った先にある。未来が」

「ハイレ……ちょっと真面目っぽい」

「うるせぇな、真面目にもなるわ! 資産吹き飛ぶところだったんだぞ!」

笑いながら肩を叩き合う四人。

ランスが焚き火を見つめ、静かに言った。

「資産形成ってやつはな……今までは序章にすぎなかったんだ。ここからが本番だ」

俺たちは、次なる戦いに向けて、再び歩き出す。

資産形成の冒険は、まだまだ続く

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