第22話 前編 ーバーベキューは資産形成の敵!? 国民の森と支出の迷宮」ー
国民の森――
それは、家族連れの夢をすべて詰め込んだ、広大な大自然リゾートだ。
バーベキューエリアはもちろん、空高くそびえるアスレチックの塔、湯けむり漂う温泉の泉、子どもたちが冒険を学ぶ託児付き訓練場まで、すべてが揃っている。
この日、俺たち投資勇者一行は、それぞれの家族とともに「焼き肉の結界石エリア」で合流していた。
鉄板の上では魔獣ステーキがジュージューと音を立て、スパイスの香りが空に舞う。
子どもたちの笑い声、家族の語らい、そして俺たちの資産形成バトルの幕開けだ。
「……なぁ。俺たち、結婚してからイベント多すぎないか? 独身の頃と比べて、支出の桁が違うんだが……」
ハイレが空を見上げてぼやく。
「そりゃそうだ。人生ってのはそういうもんだよ、ハイレ」
ランスがニヤリと笑い、鉄板の油を巧みに拭き取る。
「でもさ、なんでこんなに金がかかる? 誕生日、記念日、親戚付き合い、保険更新、おでかけ、外食……次から次へと!」
「それが人生イベントラッシュってやつさ」
ランスは懐から資産管理の巻物――家計簿――を取り出し、俺たちの目の前に広げる。
「見てみろ! 20代ってのは、一瞬で過ぎ去る季節だ。浪費イベントを全部こなすやつもいれば、節約に徹するやつもいる。でもどっちも正解じゃない。重要なのは――」
ランスは大きく指を立てて叫ぶ。
「無駄を省くことだ!」
バシュッ!
その瞬間、鉄板の下から禍々しい気配が噴き上がる!
支出の使徒:ムダガミが現れた!
巨大なレシート状の体を持ち、無数のレシート触手がうねり、奢り癖と衝動買いを唆る魔物だ。
「また出やがったな……!この前もファッションモールで暴れたばかりだぞ!」
ハイレが後ろに跳ねる。
ムダガミは《衝動買いスラッシュ》で肉を奪い、《奢りの誘惑ブレス》で俺たちの財布に直接ダメージを与えてくる!
さらに《サブスク増殖波》で不要な定額サービスを次々と契約させ、家計にじわじわと毒を回していく!
「やばい、家計が赤字に染まる……!」
俺は叫ぶ。
「落ち着け!」
ランスが巻物を地面に叩きつけると、三つの魔法陣が出現!
「これが俺の奥義――口座三分割術!」
ランスの号令とともに、三つの魔法陣が眩い光を放つ!
「一つ目は生活口座ライフゾーン! 日々の生活費はここで管理!」
「二つ目は資産形成口座グロウゾーン! 投資信託や積立NISAで未来を育てる!」
「三つ目は遊び用口座ドリームゾーン! バーベキューや旅行はここから使うんだ!」
ムダガミが《浪費の大津波》で襲いかかる!
だが三つの魔法陣が波を分散・吸収し、家計へのダメージを最小限に抑える!
「支出を仕分けることで、ムダガミの攻撃を封じた!?」
ハイレが驚く。
「その通り!」
ランスが叫ぶ。「お小遣いは貯めてから使う! 節約の極意だ!」
だがムダガミは怯まない。
《サブスク増殖波》を連発し、俺たちのスマホに謎の定額請求アプリがどんどんインストールされていく!
「くっそ、こんなものに家計を食い荒らされてたまるか!」
俺は《現状把握スキャン》を発動し、家計の全支出を可視化。
ブリジットが乱入し、《予算斬りの剣・ファイナンシャルエッジ》を抜き放つ!
「お金が無ければ、そもそも結婚に踏み出せない人も多いのよ!」
ブリジットは《未来設計カウンター》でムダガミの攻撃を跳ね返し、
「いい? 若者の可処分所得が減って、将来に希望が持てない。だから若者は子どもを持つことを躊躇してしまう。それが少子化の一因でもあるのよ!」
ムダガミは怒り狂い、《浪費の大津波》をさらに強化!
家計の防壁が軋む――!
「全部魔王ジミンのせいにしてたら、未来は変わらない。無駄な支出と真剣に向き合うことが、未来を救う第一歩よ!」
ブリジットの《予算斬り》がムダガミの体を大きく裂く!
だがムダガミは《ポイント還元の罠》で反撃、俺たちの購買意欲を一気に高めてくる!
「うおおお! なんか得した気分になって財布の紐が緩むぅ!」
「騙されるな! ポイントのために無駄な買い物をするのは本末転倒だ!」
ランスが《サブスク断ちの拳》を炸裂させ、ムダガミの触手を叩き落とす!
「これで終わりだ――!」
だが、ムダガミは最後の切り札、《見栄消費バースト》を発動!
周囲の家族連れやSNS映えを狙う誘惑が、俺たちの理性を揺さぶる!
「みんな、冷静になれ! 本当に必要なものだけにお金を使うんだ!」
俺は《自己投資シールド》を展開し、見栄消費の誘惑を跳ね返す!
ブリジットは《未来への投資斬り》でムダガミのコアを貫き、
ランスが《節約の極意・奥伝》でとどめの一撃!
「これが、俺たちの家計防衛戦だ!」
ムダガミは断末魔の叫びを上げ、ついに小さなレシートの紙吹雪となって散った。
戦いの終わり、ランスはコッソリ呟いた。
「嫁さんに内緒の秘密口座を作るのもアリだぜ!」
ハイレ : 「!?……お前の口からそんな言葉が出るとは……お互い、変わったよなぁ」
ランス : 「まあ、冗談だよ。秘密口座はまだ作ってないけどな!」
みんなで焼き上がった魔獣リブを囲み、乾杯する。
俺たちの資産も、未来も、守るべきものがまた一つ増えた気がした。