番外編 母なる魔導士、クラスチェンジ 愛と成長の記録
育児魔導士ブリジットの冒険譚
~ダンジョン・オブ・チャイルドケア~
プロローグ:伝説の魔導士、母となる
かつて私は、魔導士ブリジットとして名を馳せた。
ドラゴンの吐息を封じ、ガーゴイルの呪詛を打ち破り、幾多の魔法バトルを生き抜いた歴戦の冒険者。
だが今、私の肩書は変わった。
現・育児魔導士。
私が挑むのは、かつてない難関ダンジョン──
その名も「育児」。
「……この世で一番強いモンスター、それは赤ん坊じゃない?」
私は密かにそう呟いた。
だが、これはただの冗談ではない。
このダンジョンには、想像を絶する連戦と、未知の魔法、そして愛と成長の奇跡が詰まっているのだ。
第一章:名もなき日々の連戦
【夜泣き魔獣】とのバトルは毎晩発生する。
深夜の静寂を切り裂く咆哮──「ギャアアアア!」
私は即座にスキル《ダッコアンドスタンド1hour》を発動。
腕力ゲージを消耗しつつ、HPとMPを同時に削られる苛烈な戦いだ。
「眠気デバフ……最大値……!」
だが、戦いの中で得られるものもある。
抱っこクエストを繰り返すたび、私の腕力は着実にレベルアップしていく。
筋力ステータスが上昇し、かつての魔導士時代にはなかった肉体的成長を感じる。
【離乳食バトル】もまた、魔法戦のように繊細だ。
《ホットでもクールでもダメ魔法陣》の中で、適温を探るスキルチェック。
一瞬の油断が、赤子の「拒否呪文」発動を招く。
「ぬるすぎても、熱すぎてもダメ……この温度管理、Sランク難易度!」
食べてくれた瞬間の「にこっ」という笑顔。
それは、どんな魔法のドロップよりも貴重な報酬だった。
第二章:魔力の芽吹き──子の発現スキル
生後9ヶ月。
息子は突如、謎の魔力反応を示した。
「ぎゃおおおお!」
その咆哮は部屋の空気を震わせ、父オルカの脳を30秒間フリーズさせる特殊効果付き。
「やばい……この子、才能あるわね……」
1歳を迎える頃、彼は《ものまね魔法》を発動。
オルカの「投資魔導書」を咥えて真似をし、
私の「ブログ魔道端末スマホ」を指先でスライドする。
「この子、早熟系……!今後の成長ログは絶対に記録しなきゃ!」
私は冒険記録としてのブログを書き綴る。
それはいつしか、読者たちに癒しのバフを与え、ブログ収入も最高値を更新していた。
第三章:母の葛藤、再出撃の決意
子どもが1歳になり、私は再び社会というフィールドに出る決意をした。
新たな職場は、冒険者たちを導くギルド《ミネルヴァ》。
私は「子育て魔導士」として、若き冒険者たちに知恵と魔法を伝える役割を得た。
だが、心には葛藤があった。
「この子の“初めて”を見逃すかもしれない」
「母親失格」と囁く幻聴魔法が、私の心に忍び寄る。
けれど、私は思う。
「働くことは逃げじゃない。私なりの誇りだってある」
だから私は選んだ。
母であり、子育て魔導士であるという生き方を。
第四章:夫婦再連携──支援魔法と物理の共鳴
ある日、私は高熱でダウン。
その瞬間、夫オルカが全てのクエストを休み、ワンオペの迷宮に単身突入した。
【ワンオペバトル・オルカ編】
夜泣きイベント、離乳食クエスト、オムツ交換トラップ……
彼は魔法のような手際で洗濯物を干し、赤子のよだれを拭き、
家事と育児の全てを同時攻略してみせた。
「俺、完全にナメてた。毎日これやってたんだな……」
その言葉に、私は戦友としての尊敬を新たにした。
結婚はゴールじゃない。
子育ても、片方の責任じゃない。
家族という名のパーティーで挑む、終わりなき冒険なのだ。
第五章:育児ダンジョンのサブボスたち
【偏見の魔獣】
「母親なら家事も育児もやって当然!」
「父親が育児?ありえない!」
この呪詛を放つサブボスが、時折家庭フィールドに出現する。
私は《論破魔法・リベリオン》を詠唱。
「家族は共闘!ワンオペに未来はない!」
オルカも《物理支援スキル》で応戦。
二人の連携魔法が、偏見の魔獣を撃退する。
第六章:子の未来、母の願い
この子は、どんなスキルを得るのだろう。
勇者?魔導士?それとも、投資の賢者かもしれない。
けれど、どんな道を歩むにせよ──
私はこの子の、最初の支援魔法使いであり続けたい。
今日も、彼の小さな「できた!」に魔力を注ぐ。
それは、世界を変える力になると信じて。
エピローグ:新たなるクエストの予感
「ピンポーン」
玄関のインターホンが鳴る。
私はそっと我が子を抱き寄せ、扉の向こうを見据える。
そこには、また新たなクエストが待っているのだろう。
私たち家族の物語は、まだ始まったばかり。




