第16話 親なる者たちの冒険──育児帝ゴリオシ討伐戦
奇跡の新たなパーティメンバー
時は流れ、俺とブリジットも二十代後半。
資産構築という名の冒険も中盤に差し掛かり、ついに念願のヴィンテージホームという砦を手に入れた。
日々を堅実に歩む中、俺たちの旅路に、思いもよらぬ奇跡が舞い降りる。
「命が……芽吹いたのね」
ブリジットが静かにお腹に手を添えた瞬間、世界が一変した気がした。
資産運用という冒険は、家族という新たなクエストへと進化したのだ。
「これが……新たなパーティメンバー……!」
俺の胸に、これまでにない決意の炎が宿る。
守るべきものが増えるということは、冒険者にとって最大の強化だ。
この日から、俺の人生は家族という名の新章に突入した。
サブクエスト発動!《ママの書ブログ》
やがて新たな命が誕生し、ふたりの冒険は新章を迎える。
ブリジットは戦線を一時離脱し、《母の書》というサブクエストに挑むこととなった。
収入源は、俺の魔物討伐報酬と、ブリジットの細やかな副業のみ。
だが、彼女が書き綴る新章子育てブログの魔導書は、金貨では測れない力を持っていた。
「今日も、子どもが初めて笑った。
その笑顔は、どんな魔物のドロップよりも価値がある──」
ブログが更新されるたび、遠く離れた読者たちの心に癒しのバフがかかる。
そして何より、ブリジット自身に「社会との絆」を感じさせる精神的ポーションとなっていた。
「私の冒険も、まだまだ続く……!」
俺は、彼女の背中をそっと押しながら、家族の新たな物語を見守ることにした。
新米パパの試練
育児という名のダンジョンは、これまでのどんな魔物の巣窟よりも複雑で、
予測不能なトラップが張り巡らされていた。
「オルカ、ミルクの温度はこれでいいの?」
「う、うむ……たぶん……」
夜泣きイベント発生!
深夜二時、突如として響き渡る泣き声の咆哮。
寝ぼけ眼でベビーベッドに駆け寄る俺。
「くっ……この眠気デバフ……!だが、負けるものか!」
オムツ交換クエスト発動!
「この……魔臭攻撃……!だが、我が子のためならば!」
寝かしつけバトル!
「スリープ・ソング!」
子守唄という名の魔法を唱えるが、赤子は逆に覚醒し、泣き声のボリュームが2倍にパワーアップする。
「なんて強敵だ……!」
かつての冒険で培った精神力も、育児ダンジョンでは通用しない。
だが、我が子の笑顔を見るたび、HPとMPが全回復する不思議な力を感じていた。
ブリジットの復帰クエスト:ギルド・ミネルヴァ
時が流れ、子どもが1歳を迎えた頃。
ブリジットは、拠点復帰クエストギルド・ミネルヴァを発動する。
そこは冒険者たちの知と経験が結集した支援施設。
託児所という神殿も備える次世代拠点だ。
「冒険者生活設計アドバイザー」として復帰したブリジットは、
節約スキル、資産形成魔法、副業錬金術……
数々の知恵を、若き冒険者たちへ伝える新たな役割を得た。
「これからは、私の経験を他の冒険者にも分け与えたい──!」
俺は、彼女の成長と挑戦を心から誇りに思った。
サブボス出現!ワンオペ戦線
「育児は母親の仕事?」
かつての呪文は、今や時代遅れの黒魔法。
俺はそれを斬り捨て、決意する。
「共闘だ。これは、ふたりで挑む戦いだ!」
オムツの交換、夜泣き、離乳食作成、寝かしつけ……
かつてない連戦に挑む俺。
ある日、ブリジットが体調を崩し、
ついに《ワンオペパパ育児バトル》が勃発!
深夜、ベビーモンスターの泣き声が家中に響き渡る。
俺は片手でミルクを温め、もう片手でおむつを用意し、
足でスイングを揺らしながら、同時に家計簿アプリを起動する。
「……これ、マジでボスクラスだ……!」
何百体の魔物を斬ってきた剣士にとっても、それは最も精神力を削る試練だった。
「育児は……ソロで挑むもんじゃない。完全なる共闘型ダンジョンだ……!」
仲間たちの成長と合流
そんな中、仲間たちにも静かな変化があった。
ランスとハイレもそれぞれ人生のパートナーを得て、
なんと、子どもが一人ずつ誕生していたのだ。
「おい、いつの間に……!」
「言ってなかったか?お前が結婚した時、俺もちょっと……な。」
「うちの子、俺がドラゴンファンドの話すると泣くんだよ」
「……将来有望だな!」
「いや、それ才能じゃないからな!?」
彼らもまた、父という新たなクラスを獲得していた。
中ボス登場!育児帝ゴリオシ
その頃、街の空気は歪み始めていた。
姿を見せぬ中ボスが、家庭というフィールドに現れ始める。
名を──育児帝ゴリオシ。
「母親なら家事も育児もやって当然ゴリィィ!」「父親が育児?ありえないゴリィィ!」
この言葉に操られた住民たちは、知らず知らずのうちに家事育児の負担を母親だけに押しつけ、やがて家族は崩れ始める。
俺、ランス、ハイレは、かつてない怒りに震えた。
「ワンオペに未来はないッッッ!!」
ゴリオシ討伐戦!三位一体スキル発動
俺たちは育児スキルを結集し、討伐戦を開始!
俺の【睡眠導入魔斬】が夜泣きを沈め、
ランスの【感知眼】が赤子の不調を即座に察知、
ハイレの【共遊乱舞】が爆笑と共に家族を笑顔に包む!
「行けえぇぇッ!パパたちの底力ァァァ!」
ゴリオシの「偏見の咆哮」がフィールド全体に響くが、三人の「共闘バリア」がそれを打ち消す。
「父親が育児?ありえないゴリィィ!」
「そんな時代は終わった!」
俺の剣が偏見の鎖を断ち切り、
ランスの盾が母親への負担を受け止め、
ハイレの魔法が家族全体に癒しの光をもたらす。
ついに──
ゴリオシは三位一体スキルを受けて討ち果たされた!
新スキル獲得!育児勇者たち
討伐の報酬として、三人は新たなスキルを手に入れた。
•俺:《育児戦士》 ワンオペ防御力 +50%、おむつ交換速度 +25%
•ランス:《観察力の父》 子どもの異変を即時感知するスキル
•ハイレ:《一緒に遊ぶ》 魔物討伐と同じ熱量で子と遊ぶ力
俺たちは今や、資産運用の冒険者であると同時に、育児というダンジョンの勇者でもあった。
未来の扉と新たな試練
育児は、資産形成よりも遥かに難しく、予測不能なトラップが多発する最高難度のミッションだった。
だが、共に戦う仲間がいれば──どんな未来も切り拓ける。
そしてある日のこと――
「ピンポーン♪」
家のインターホンが鳴った。
扉の先に待つのは、新たな試練か、それとも……。