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第13話 バブルの魔人・ブクーケイキ現る! そして、破裂の時…

積立の祝祭と静かな予兆


「ふふ……今年は資産が順調ね」

月明かりに照らされた祭壇の上、ブリジットが微笑む。

手元のスマホに煌めくポートフォリオ。

俺たち勇者パーティが25歳にして築いた平均500万ベルの資産は、時とともにさらに膨れ上がっていた。

俺は証券会社のアプリを開き、今月も五万ベルを全世界株インデックスに積み立てる。

節約スキルも健在、入金力も衰えず。

資産がじわじわと育つその感覚――

それこそが積立投資家にとって、何よりも甘美なご褒美だった。

(※ただし、ハイレを除く。

彼は浪費の誘惑に抗いきれず、「積立遅延の呪い」にかかっていたため、資産はまだ乏しい。)


「はっはっはー! 景気がいいな! 我が《ドラゴンファンド》最近は天翔ける竜のごとく!!」

ハイレがポートフォリオを掲げ、高らかに笑う。

彼は相変わらずぼったくり型アクティブファンドにも小さな積立を続けていた。

だが、その時。

ニホン王国、その経済の中枢を担う伝説の大魔導機関《ジミ銀(ジミン中央銀行)》が、静かに動いた。

「市場が熱狂しすぎておる。……利上げと金融引き締めの刻じゃ」

魔導通信によってその報せが流れ、経済の空気がわずかに変わった。


バブルの魔人・ブクーケイキ、降臨!


それは、ある晴れた日の午後だった。

突如として空が轟き、天地が裂ける。

「グォォォォ……金を回せぇぇぇぇ!!」

大地を割って現れたのは、バブルの魔人・ブクーケイキ。

全身が眩い黄金に包まれ、羽衣のようなチャートが宙を舞い、

その瞳は恍惚と陶酔に染まっていた。

「未来は明るい!! 買いまくれぇぇぇ!! オマエら全員、投資の天才だぁぁ!!」

魔人が撒き散らす「強気相場のブルミスト」は、

あらゆる民の理性を溶かし、持てるベルを株、不動産、投資信託へと投げ込ませる。

町は狂喜し、国中が浮かれ始めた。

誰もが「自分は選ばれし投資の勇者」だと信じ込んでいた。

そして俺たちパーティまでもが、その空気に呑まれつつあった。


ブルミストの誘惑――陶酔の大乱戦


「なんか最近……含み益がすごいね……」

ブリジットが眩しそうにスマホを見つめる。

「これは……さすがにバブルかもしれないな……」

ランスは眉をひそめながらも、どこか楽観的な表情を浮かべていた。

そのとき、ブクーケイキが両腕を広げ、

「ブルミスト」を一帯に撒き散らす!

「投資こそ正義! 今こそ全力買いだぁぁ!!」

霧が俺たちの周囲を覆い、資産の数字が眩く輝き始める。

「もっと積め!もっと買え!今しかないぞ!」

魔人の声が脳内に直接響く。

「やばい……頭が熱い……」

俺は【冷静の盾】を必死に構えるが、

含み益の幻影が視界を埋め尽くす。

「見て!私のポートフォリオ、年初来+30%よ!」

ブリジットのスマホの魔鏡が虹色に光る。

「俺のドラゴンファンドも、ついに覚醒……!」

ハイレはドラゴンの札束を天に掲げ、舞い踊る。

「みんな、落ち着け!これは幻だ!」

ランスが【理性の剣】を抜き、ブルミストを斬ろうとするが、

魔人の陶酔の結界が剣を弾き返す。

「投資こそ人生!全力で買い増せぇぇぇ!!」

ブクーケイキの咆哮が町中に響き渡る。


バブルの宴と暴走――ファンタジー市場の狂乱


町は幻想の祝祭に包まれた。

人々は【借金の杖】でレバレッジをかけ、

【不動産の札束】で踊り狂う。

空には【上昇チャートの龍】が舞い、

道端には【利益の泉】が湧き出し、

子どもたちさえ「信用取引!信用取引!」と叫んでいる。

俺やハイレも魔人の力に抗えず、

「今月は10万ベル積み増しだ!」

「レバレッジファンドに全ツッパだ!」

と、次々に魔法の呪文を唱え始める。

「……だめだ、このままじゃ全員バブルの奴隷に……!」

ランスが【家計簿の剣・真】を振るうが、

ブクーケイキの【強気相場のバリア】が立ち塞がる。

「このままじゃ……俺たちの資産も、未来も……!」

ブリジットが叫ぶ。

「みんな、正気に戻って!積立は、地道に、コツコツが一番なのよ!」

だが、魔人の陶酔の霧が、パーティの意識を深く蝕んでいく。


幻術の深層――資産運用勇者の葛藤


ブクーケイキが【幻惑のチャート・パレード】を発動!

空中に虹色のチャートが現れ、

「明日はもっと上がる!」「売るな!買え!」と、幻の声が頭に響く。

俺の手は、スマホの「買い増し」ボタンに吸い寄せられる。

「くっ……理性が……!」

ブリジットは【家計防衛バリア】を展開し、

ランスは【現実直視の一閃】で幻影を断とうとするが、

陶酔の霧はどこまでも濃い。

「俺たちの資産が……未来が……飲み込まれる……!」


バブルの終焉――魔人自爆の大爆発


季節が巡ったある朝。

世界は、突如として終わりを迎える。

「我、膨れすぎし者なり──ここにて己を破裂せん!!」

ブクーケイキが天に絶叫を放ち、全身を爆裂させた!

──ドンッ!!

黄金の閃光が走り、空が砕け、音が消えた。

その身体は中空の風船のようだった。

中身のない希望と陶酔で膨れ上がった魔人は、自らの虚飾によって自壊したのだ。

バリアも結界も──役には立たなかった。

俺たちが築いた含み益のバリアは、一瞬で吹き飛ぶ。

・《全世界株インデックス》:一時50%の大ドローダウン

・ハイレの《ドラゴンファンド》:70%以上の崩壊

「お……俺のドラゴンが……ミミズになっちまったぁ……」

ハイレが崩れ落ちる。

「含み益……全部消えた……」

ブリジットは膝をつき、スマホを握りしめる。

「……これが、バブルの正体か」

ランスが静かに呟いた。


崩壊後の混沌――勇者たちの再起


バブルの魔人が爆発した後、世界は凍りついた。

市場は混乱し、買い物客の数も激減。

賃金は上がらず、失業者が溢れ、町は沈黙に包まれる。

「……2四半期連続で《GDP》が縮小した。ニホン王国、リセッション入りだろう」

ランスの言葉が、俺たちの背筋を氷のように冷やす。

町の掲示板には、倒産、減配、リストラ、資産半減の札が並ぶ。

人々の顔から笑顔が消え、

「もう投資なんてこりごりだ……」

「やっぱり現金最強……」

と、嘆きの声が響く。

だが、俺たちは違った。


忍耐の誓いと積立の意志――再起の儀式


「……俺たちは、積み立てをやめない」

俺は決意の剣を静かに握りしめる。

「どんな暴落でも、どんな苦境でも」

「積立投資家は、歩みを止めない」

ブリジットが【狼狽売りキャンセラー】を再び掲げる。

「資産が減っても、積み立ては裏切らない。私は、信じる」

「俺もだ」

ランスが【家計簿の剣・真】を再び抜く。

「この混乱の中でも、入金力を絶やさない。それが、俺たちの流儀だ」

ハイレも、涙を拭いながら立ち上がる。

「……今度こそ、積立遅延の呪いを断ち切ってやる!」


積立の魔法陣、勇者たちの新たな夜明け


パーティは再び【自動積立魔法陣】を展開。

「五万ベル、全世界株インデックスに積み立て!」

「分散投資、長期投資、継続あるのみ!」

彼らの意志は、バブルの残骸の中で確かな光となる。

資産は一朝一夕にして築かれるものではない。

俺たちは再び、静かに歩き出す。

未来の爆益も暴落も、すべて受け入れながら。

「積み立ては、どんな魔人にも負けない」

「俺たちの資産形成の旅は、まだまだ続く!」

夜明けの空に、新しい決意が輝いていた。

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