第12話 節約への道 ゼイタクデモンスター討伐戦 そして忍び寄る影
七年の旅路、積立の塔へ
勇者オルカたちが旅に出てから、七年。
かつて未熟だった若者たちは、いまや25歳。
「黄金の錬金術インデックス投資」を極めし熟練の冒険者となっていた。
俺は今も全世界株インデックス投資信託に毎月5万ベルを積み立てる。
暴落という名の呪いを耐え抜き、倹約という名のスキルを磨き、
着実に資産の塔を築いてきた。
【現在の戦果】
投資元本:420万ベル
含み益:135万ベル
資産合計:555万ベル
平均利回り:約8%
「積み立て続けて……よかったな」
夕焼けを背に、俺は静かに呟く。
あの頃の俺たちでは想像もできなかった資産の高さ。
だが、ここまで来る道は決して平坦ではなかった。
「この前の大暴落のとき、オルカを気絶させて正解だったわ」
ブリジットが拳を握り、誇らしげに頷く。
その拳は狼狽売りキャンセラースキル搭載の伝説級装備である。
「でもここまで続けられたのは、毎月5万ベルの入金力を維持できたからだね」
慎重派ランスが冷静に補足する。
その言葉に、全員の表情が引き締まった。
入金力の維持──それは単なる習慣ではなく、数々の誘惑と戦う終わりなき闘争だった。
――
回想――浪費魔獣ゼイタクデモンスター襲来
あれは数年前。
俺たちがまだ駆け出しの資産形成者だった頃。
とある街に立ち寄った俺たちの前に、突如現れた中ボス──
浪費魔獣 ゼイタクデモンスター
属性:甘美、誘惑、月末破産型
「ランス!疲れたろ? コンビニで甘い魔法飲料でも買ってこいよォ!」
「オルカ!今夜は居酒屋ドラゴン亭で贅沢ディナーだ! ご褒美ご褒美ぃ〜!」
「ハイレ!最新の魔導スマホ出たぞ!通信料込み月々1万ベル!さあ契約ぅぅぅ!」
「ブリジット!このブランドバッグ、今だけ30%オフよぉ♡」
ゼイタクデモンスターは、
酒、タバコ、外食、コンビニ通い、高額スマホ、ブランド品、無駄なサブスク……
あらゆる浪費の誘惑を武器に、パーティ資産をガリガリと削っていく!
バトルシーン:浪費の嵐
「ちょっとくらい、いいよな……?」
魔力に蝕まれたハイレが財布を手に取りかけた、その瞬間──!
「踏みとどまれッ!! みんな!!」
ランスが咆哮とともに魔封呪文【シボリマクリス】を放つ!
青白い魔法陣が空間に広がり、浪費の誘惑を一時的に封じ込める。
「魔王を倒すんだろ!?目先の快楽に魂を売るなァァ!!」
ゼイタクデモンスターが【月末破産波】を放ち、
パーティ全員の財布にダイレクトアタック!
「危ない!」
ブリジットが【狼狽売りキャンセラーの拳】で、
浪費の衝撃波を打ち消す!
「くっ……このままじゃ資産が溶ける!」
俺は【倹約の盾】を構え、誘惑の【甘美光線】を必死に防ぐ。
「俺の……俺の入金力が……!」
ハイレが膝をつきかけたとき、
ランスが【家計簿の剣】でゼイタクデモンスターの触手を斬り払う!
「撤退だ!今は勝てない!」
仲間たちはかろうじて正気を取り戻し、一時撤退を選択した。
再戦の準備:家計スキルと魔法陣
ゼイタクデモンスターに対抗するため、
俺たちはスキルと魔法を習得する。
【新スキル習得】
・外食耐性1:目の前に焼肉があっても動じにくくなる
・サブスク削減術:謎の動画サービスFlixtok Prime Now+との契約を断ち切る
・格安SIMの眼:通信費を月1,500ベルまで圧縮する精密魔法
【自動積立魔法陣の発動】
討伐報酬から毎月5万ベルが投資口座へ自動転送される結界を展開!
「これで……もう浪費の魔力には負けない!」
決戦!ゼイタクデモンスター討伐戦
再び現れたゼイタクデモンスター。
「また来たな、浪費の化身……今度こそ、討ち取る!」
俺は【倹約の盾】と【自動積立魔法陣】を展開。
ブリジットは【狼狽売りキャンセラー】で仲間の動揺を封じる。
ランスは【家計簿の剣】で支出の無駄を斬り伏せ、
ハイレは【格安SIMの眼】で通信費の魔力を無効化!
「いけぇぇぇ!自動積立魔法陣・フルパワー!」
俺が叫ぶと、討伐報酬が光の奔流となって投資口座へと流れ込む。
ゼイタクデモンスターが【誘惑の大波】を放つが、
外食耐性1とサブスク削減術でパーティは踏みとどまる!
「これが……入金力の盾だ!」
最後は全員の力を合わせた【積立フィナーレ・アタック】が炸裂!
「これが俺たちの、資産形成の極意だぁぁぁ!!」
ゼイタクデモンスターは断末魔の悲鳴を上げ、
資産の塔の彼方へと消え去った。
――
現在:忍び寄る黒き影
「節約のスキルがなかったら、ここまで積み立ては続かなかったね」
ブリジットが微笑む。
「強制自動積立……地味だけど、最強のスキルだな」
俺は空を仰ぐ。
その時だった。
遠く、山脈の向こう。
空の一角に、禍々しい黒き影がゆっくりと姿を現す。
「……あれは、なんだ?」
ランスの目が鋭く細められる。
「巨大な……何か?」
ブリジットが不安げに呟く。
その怪しい影──その存在が、何を意味するのか。
俺たちはまだ知らない。
しかし、次なる戦いの予感は、確かに空気を震わせていた。
魔王ジミンの魔力が動き出そうとしているのか。
それとも、新たな刺客か……?
俺は、入金力の盾をさらに強く握りしめた。