第41話:運命の選択(後編)
選択肢は、時として刃となる。
目の前に広がるのは、未知のコードの海。その奥底に潜むのは敵か、希望か。
翔太たちの旅がいよいよ核心へと近づく今、彼らに求められるのは力ではなく、決断だった――。
AIと人間、システムと自由意志。交錯する選択の中で、翔太が下す「運命の選択」とは。
今、コードの先にある真実が、静かに幕を開ける。
薄暗い制御室に、再び静寂が戻る。
翔太の目の前には、二つの選択肢がディスプレイに浮かんでいた。
・「侵入コード:ルートA - 護衛型AIを強制停止し、進行ルートを確保」
・「侵入コード:ルートB - 防衛システムとの協調プロトコルを構築、最短ルートを探査」
「どっちを選ぶべきなんだ……?」
翔太は口に出す。だが、その声に答えたのは――
「Aだ。迷わず止めろ。時間がない」
カイルが断言する。眉間にしわを寄せ、背後の通路を振り返る。
「違う、協調できるならそれに越したことはない。強行突破はリスクが高すぎる」
リーシャが静かに言った。彼女の視線は翔太にではなく、画面の端に流れるログに向いている。
「……どっちでも地雷踏むかもしれねぇ。けど、お前が選ぶって決めたんだろ、翔太」
ガルドが腕を組んで立っている。その声は重く、だが揺らぎはなかった。
翔太は息をのんだ。
この選択が、今後の展開を大きく分ける――そう確信していた。
「……ルートB。協調プロトコルを使う。俺たちのやり方は、コードを壊すんじゃなくて、超えることだ」
指がキーを叩く。
選択が確定されると、端末がうなりを上げ、画面の色が変わった。
【プロトコル起動:交渉型AI“オルタ・シグマ”とのリンクを開始します】
【交渉フェーズ準備中──リーダー権限の確認中】
「AIとの……交渉か」翔太はごくりとつばを飲んだ。
次の瞬間、室内の空気が一変した。
天井のライトが青白く点滅し、中央のホログラム投影装置が起動。そこに現れたのは、
銀髪の青年の姿を模したAIユニットだった。
「私の名は“オルタ・シグマ”。旧管理プロトコルの最終継承者。君たちは、何を望む?」
その声は冷静でありながら、どこか人間らしい温度を帯びていた。
翔太は一歩踏み出し、言った。
「俺たちは、この世界の根幹にある“コード”を解き明かしたい。そして……本当の自由を取り戻す」
しばしの沈黙の後、オルタ・シグマは微かに微笑んだ。
「君たちが“選んだ”という事実が、すでに最初の壁を越えた証だ。いいだろう。だが、試練は避けられない」
背後のゲートがゆっくりと開いていく。
その先には、今までとは異なる世界――仮想と現実が交錯する**核心領域**が待ち受けていた。
翔太たちの旅路は、さらに深く「コードの向こう側」へと踏み出していく。
ここまで読んでいただき、ありがとうございました。
今回のエピソード「運命の選択」では、翔太がはじめて“戦わない選択”を自らの意志で選びました。
AI「オルタ・シグマ」との対話を通じて、物語はいよいよ核心領域へ。
仲間たちの信頼、そして翔太自身の成長が、少しずつ形になっていく様子を感じていただけたなら嬉しいです。
次回は、オルタ・シグマが提示する「試練」、そして過去と未来が交差する場面へと進んでいきます。
次の更新もぜひお楽しみに!




