第35話:霧の森の主
霧に覆われた森。そこに待ち受けるのは、未知の存在——。
翔太たちが旅を続ける中で訪れた霧の森は、普通の森とは異なっていた。魔物を倒しても晴れない霧、そして何かを隠しているかのような不気味な空気。彼らは迷いながらも霧の奥へと進み、その正体へと迫る。
今回のエピソードでは、翔太たちの新たな試練となる強敵が登場します。死霊の気配をまとったこの森の異変は、一体何が原因なのか——。
彼らの前に立ちはだかる「霧の森の主」との対峙を、ぜひ見届けてください。
翔太たちが霧の森の異変に気づいたのは、魔物との戦闘が終わった直後だった。
「霧が……晴れない?」
リーシャが不安げに辺りを見渡す。
通常、魔物を倒せば異常な魔力は消え去り、環境も元に戻るはずだった。しかし、この森では違った。霧は依然として漂い続け、むしろ濃くなっているようにも感じられる。
「どうやら、ただの魔物の仕業じゃないようだな」
ガルドが低く唸るように言う。
翔太は新たに手に入れた光の魔法をもう一度使おうとしたが、先ほどの戦闘で消耗が激しく、うまく魔力が練れなかった。
「……この霧の発生源を突き止めるしかなさそうだな」
カイルが地図を広げるが、濃霧のせいで方角すら怪しい。
「まいったな。これじゃあ道も分からないし、適当に進んだら迷いそうだ」
翔太が頭をかく。
「いや、霧の中に何かある……」
リーシャが感覚を研ぎ澄ませ、目を細める。
翔太たちはリーシャの直感を信じ、慎重に霧の中を進んだ。やがて、前方に巨大な木が現れた。その幹には無数のツタが絡みつき、まるでそれ自体が生きているかのような不気味な雰囲気を放っている。
「これが……霧の発生源?」
カイルが剣を握りしめながら呟く。
すると、その巨木の根元から黒い影がゆらりと揺れ、ゆっくりと形を成していった。
「待って……誰かいる?」
翔太が身構える。
霧の中から現れたのは、黒いフードをかぶった人物だった。
「……ここまでたどり着くとは、大したものだ」
その声は低く、冷たい響きを持っていた。
「お前は……誰だ?」
カイルが問いただす。
フードの人物はゆっくりと顔を上げると、冷笑を浮かべながら答えた。
「我は霧の森の主、死霊の司祭ロクス。貴様らがこの地を荒らしに来たというのなら——相応の報いを受けてもらうぞ」
ロクスが手をかざすと、巨大な木の幹が黒い魔力に包まれ、無数の影がそこから這い出してきた。
「また死霊か……!」
ガルドが戦槌を構える。
「今度は普通の攻撃じゃ通用しないかもな……!」
カイルが剣を握り直す。
翔太は息を呑んだ。霧の森の異変を引き起こしていたのは、この男だったのか。そして、彼の力は今までの死霊の魔物とは比べものにならないほど強力に思えた。
「おもしろい。ならば、お前たちがどこまで抗えるか見せてもらおう……!」
ロクスが手を振ると、霧が渦を巻き、さらに濃く広がっていった。翔太たちは視界を奪われながらも、全力でこの戦いに挑むことを決意する。
——霧の森の本当の試練が、今始まろうとしていた。
翔太たちがたどり着いたのは、霧を操る強敵・死霊の司祭ロクス。
これまでの戦いとは違い、視界すら奪われる中での戦闘となり、厳しい戦いが予想されます。
今回の話では、霧という要素を使って、単なる力のぶつかり合いではなく、知恵と戦略が求められる戦いの始まりを描きました。
この先、翔太たちはどのようにロクスの力に立ち向かうのか——。
次回もぜひお楽しみに!




