先祖が残したヤバい本
父の遺品整理で出てきた一番ヤバい本が『陰陽道秘伝集』と称する筆書きの本でした。
というと、男女のまじわりのことを描いたヤバい本かと思われるかもしれませんが、そうではありません。祖父以前のご先祖が各地をまわって集めた怪しげな術集だったのす。
その中で一番憶えているのが「全てのことを嘘に変える真言」です。
「オンウソウソウソウソソワカ」
普通はこれを見たら、中二病のご先祖が書いたアホな呪文と思うことでしょう。
しかし、そのページには続きがあったのです。
「○○山○○寺の住職○○上人より伝授さる。秘すべし秘すべし」
頭を抱えました。
今では立派なお寺として知られている某寺のトップが、裏でこっそり変なマジナイを作って伝授していたのです。これが世に出たら一大スキャンダルです。
伝授というからには、ご先祖も相応のお礼をしていたと思います。ご先祖がいいカモにされていたのです。
その他の内容も、壁をぬける法だの空を飛ぶ法だの、ろくでもない術ばかり記されていて、伝授した者の身分と名前がしっかりと記されていました。大体は辟穀(五穀断ち)をして山中の洞窟で暮らし、斎戒沐浴して何ヶ月、といった、ほぼ不可能な修行法が書かれていました。
そして、雨乞いや晴れ乞いといった世の役に立ちそうな術は一つも書かれていなかったのです。
頭が痛くなりました。
……こんな本を世に出してはいけない。いかに民俗資料とは言えヤバすぎる。
一通り目を通してから庭で燃やしました。
その他に『神足歩行術』の版本も出てきました。
これは国会図書館にも入っている本なので、古本屋で売りとばしました。
以上、ご先祖が残したヤバい本の話でした。