帰路
ウトウトとしていたのだろう、気が付けばわたしは眠ってしまったようだった。
周りには美しい星空が広がっている。前にも同じ風景を、わたしは見たことがある。以前は宇宙のように感じたが、冷静になってみれば、星空を映すウユニ塩湖っぽく感じる。
「ねぇ。」
少年は、わたしに話しかける。
「星空は好き?」
「昼よりかは夜の方が静かで好きだ。」
わたしが素直に答えれば、少年はにこっと笑ってこう続けた。
「きみは、もし仮に人間の数が大幅に減った時、どう思う?」
思いがけない質問に、少し考える。わたしは人間が嫌いだが、文明が退化することはわたしにとって何のメリットもない。
「めんどくさい事になったな、と思う。」
「わかった。」
そうとだけ答えると、少年は立ち上がってわたしの方を見た。
「ぼくのわがままに付き合ってくれてありがとう。」
「ここでお別れってことか。」
「うん。」
もともとドライな性格だ。人との別れは、少し残念だぐらいにしか感じない。だが、わたしは少しの希望を込めてこう言った。
「もし会ったらまた二人でアイス食べような。」
少年は、たぶん笑っていた。
こうして、あまり好きでは無い現実世界へわたしは帰ってきた。随分と時間が経っているようだが間違いなく私の家だ。わたしは何となく、佐伯に電話をかけた。
「久しぶりだな佐伯。」
「おまっ、お前一週間も何やってたんだよ!!」
憎たらしい声だが、久しぶりに聞くと悪くない。
「アイスを届けたのは貴様が?」
「いやそうだけど話聞けよ。」
「そうか。礼を言おう。」
「はいはい、どういたしまして!」
「それと、何やら心配かけたな。」
それだけ言って、わたしは電話を切った。