3人の成長
修行を始めてから10年間。師匠マーリンに鍛えられ、俺たち3人は随分成長したと思う。
俺は今16歳で身長も176cmまで伸び、視界に髪が入ると邪魔なのであまり髪はのばしたくないため、黒髪は短く切り、前髪はあげている。
マキナも16歳になり、身長は俺より少し高い少し長めの青髪で、なによりイケメンだ。
レイナは15歳になり、160cmの身長にショートカットの茶髪で、人懐っこい顔立ちは相変わらずだ。修行中はずっと獣人の姿でいる。ただ、街への買い出しなんかの時は人の姿をして行っている。
俺たち3人は最初に師匠の元に着いたらまず初めに魔力適正を調べられた。
俺の魔力特性は 強化&弱化
―強化魔法と弱体化魔法の効果が上昇し、複数人同時に付与することが可能。また、効果量に応じて消費する魔力量は比例して上昇。強化魔法と弱体化魔法以外の魔法の威力が半減する―
正直あまりパッとしないと思ったのが俺の第一印象だ。ただ師匠曰く、俺の魔力量は異常に多いらしく、多人数戦などではかなり使えるらしい。自分でもいろいろ試してみたが、強化に関しては自分よりも他者に付与するほうが効果量が大きく。同時に強化を付与出来るのは最大で5人が限界。弱体化魔法は魔法を付与する者の魔法への耐性にもよるが最大で身体能力・魔法の威力は50%ほど減少する。ただし弱体化魔法は対象に触れないと付与することができないため、どうにか対象に触れないといけないのが難点だ。
俺自身の身体能力が低いのと魔法の威力が低いのも相まって正直俺自身に付与する恩恵は薄い。身体能力が低い関係上弱体化魔法をかけるのにも苦労をする。
次にマキナの魔力特性は肉体変化
ー体の部位を他の物質又は生物の物へと変化させることができる。変化させる部位が元の体積を超える場合その分魔力を消費するー
かなり珍しい特性らしく適正を調べている時に師匠は興味深そうにぶつぶつと独り言を呟いていた。実際に試したら最初の方は右の手を鉄に変えたり、植物に変える程度のことしか出来なかった。師匠曰く、イメージが大事らしくマキナは最初の頃はイメージトレーニングを繰り返していた。修行の成果もあり、今では身体全体を変化させられるようになっている。鉄や植物はもちろん。腕をゴリラのようにすることや、足を犬のようにすることも可能となっている。
マキナは魔力量もそこそこ多く、使える魔法は創造魔法、回復魔法の2つが使える。他の魔法は使えても現状、実戦では使い物にならない程度らしい。
創造魔法は魔力を消費して、物質を作り出すことができる。
作り出せるのは無機物全般が可能だが、マキナが見たことがあるものしか作り出すことはできない。
回復魔法は四肢の欠損ほどの重症はさすがに治すことはできないが、骨折や、やけど、出血等は治癒することが可能だ。
最後にレイナの魔力特性は虚空掌握
ー実体のない物または固体ではない物を実体あるいは固体として触ることができる。例えば、空中を握ることで空を移動することができ、足で空中を蹴ることも可能となるー
実にシンプルな特性で応用力もそれなりにある。空中を走ることを可能にし、水面も走ることができた。驚くことに魔力特性の効果を発動している状態でも魔力を消費していなかったためほぼ身体能力といっても過言ではなかった。
今の俺たち3人の能力を比較すると
〜身体能力〜
レイナ>マキナ>俺
〜魔力量〜
俺>マキナ>レイナ
〜魔力最大威力〜
マキナ>レイナ>俺
と言った感じになる。
ちなみに1対1の模擬戦ではレイナは脅威の無敗だった。俺とマキナは互いに五分五分の試合が多い。正直俺はタイマンだとレイナには何回やっても勝てない。一度だけ俺とマキナ2人がかりでレイナと模擬戦をしたがそれでも勝てるか怪しい試合だった。総合的な能力で比較するならばレイナがダントツのトップで俺とマキナはほぼ同格って所だな。そんだけ身体能力に差がある。
俺たち3人は今日も修行していたが師匠に集合をかけられた。
「みんな?今夜のこと忘れてないでしょうね。」
「あぁ。もちろん」
「えぇ。」
「うん!覚えてます」
俺たち3人はそれぞれ答える。そう。今夜は俺たちにとって初めての実戦であり、作戦だ。俺たちの目的への始まりだ。
「今夜奴隷商人を襲う。覚悟はできてる?」
俺たち3人は頷く。
そう。今日おれたちは奴隷商人を襲う。ただの奴隷商人ではなく違法奴隷を扱っている違法奴隷商人だ。他種族を襲い、捕まえ、そして高額で売り捌く、稀に人間の幼い少年少女を攫ってくることもある。そんなやつらだ。事前に情報も揃えた。奴隷商人の名前、奴隷の人数、種族、バックに誰がいるのかなどだ。準備は完璧だ。俺は許せない。なぜそこまでして人間と他種族の間に溝を作るようなことをする。互いに共存できないのか。
俺には理解出来ない。だから俺たちが作る。全ての種族が共に暮らせる世界を!それが俺の夢だ。そのための第一歩が今日だ!
師匠もマキナもレイナも俺の夢を聞いて協力してくれると言ってくれた。嬉しかった。頼もしかった。だからこそ。必ず成功させる。
「いいかい。レイナ以外の私を含めた3人は顔がバレるのはまずい。特に私だ。一応英雄の1人だからね。そんなやつが多種族を助けるような真似してるとバレたら指名手配される。」
そりゃそうだ。でも、師匠俺たちを助けたせいで減給と要監視対象にされたとか言ってたが、大丈夫か?いままで何ともなかったし大丈夫なんだろう。この人が少数派なだけで人が他種族を助けるなんてまず考えられないだろう。異端とみなされるはずだ。
「そこで顔を隠すために仮面を作った。作戦中はこれをかぶる。」
そう言うと師匠は白い仮面を差し出した。
「認識阻害の魔法と声を変化させる魔法も含まれている。強度もそれなりにあるしそう簡単には剥がれないように魔力も込めてある。それに仮面の内側からは透けて見えるように透視の魔法も込めた。準備は完璧さ。」
準備がいいな。かなり魔法を込めてあるっぽいし。さすがと言わざるを得ない。
「作戦開始は今日の深夜0時だ。いいね」
「あぁ。もちろん。だが奴隷たちを救出するのに誘導と移動にそれなりに人がいる。俺たち4人だけだと時間がかかる。だから人手がいるんだが」
「それは心配しないでいい。話をつけてある。みんな今日の仕事の話だ。 来てくれるかい?」
師匠がそう言うと仕事をしていたであろうメイドたちが俺たちの方まで来る。ざっと10名ほど。彼らは全員人ではない。人に擬態しているが獣人とエルフである。師匠は奴隷だったり、生き倒れている彼らを拾ってメイドとして働かせたいるらしい。
「皆。集まりました。マーリン様。」
メイド服の女性が頭を下げながら言う。彼女の名前はセレンという。師匠の家メイド長を務めているエルフだ。
「うん。ありがとうセレン。さっそくみんなに今回の作戦を考えたレイジ話して。」
「おうよ。師匠。じゃあ。今回の作戦だがまず…」
俺からの作戦をみんなに伝えた。あとは夜までに下準備を全て済ませておけばOKだ。
さて。始めるか。全ての種族が平等な世界を作る一歩を。