歴代勇者⑤
〜〜〜
「アレンくん」
「はい」
「お姉さんたちに見せてくれない? 今のアレンくんの力。どのぐらいの加護を扱えるのかを、知っておきたんだ。これからの参考にしておきたくて」
魔王城の外。
そこに広がる、鬱蒼とした森。
その中にある、ひらけた場所。そこに、アレンとセシリアの仲間たちが互いに距離をあけて佇んでいた。
吹き抜ける風。
それに己の漆黒のローブを揺らす、セシリア。
そしてそれに呼応し、微かな赤色がセシリアの瞳に灯っていく。
「遠慮はなし。その為に、五人きりになったんだから」
微笑み、セシリアは己の力を行使した。
「勇者の加護ーー遮断。これよりここを、外の世界から遮断する。この中で起こったこと。それは一切、外には影響を及ぼさない」
響く、セシリアの凛とした声。
瞬間。
真紅のドーム状の光。それがアレンたちの居る空間を包み、内へと内包する。
曰く、それは勇者の力のひとつ。
名を、遮断の加護という。
そして、更に。
「耐性の加護。防御の加護が四つ」
セシリアは呟き、己とスズメ。そしてブライ、ゼウスへと加護を付与していく。
赤い光に包まれていく、面々。
その四人を見据え、アレンもまた力を行使した。
「創造の加護」
己の手。
そこに聖剣を握る、アレン。
その姿。
それに、セシリアは目を細める。
「すごいよ、アレンくん。お姉さん、すごく嬉しい」
そして自らもーー
「創造の加護。聖剣」
聖剣を創り、その手に握った。
「来て、アレンくん。お姉さんめがけて、遠慮なんていらない」
鋭くなる、セシリアの眼光。
それに応え、アレンは駆ける。
「速さの加護が10」
刹那。
風を置き去りにし、砂埃を舞い上げアレンは一瞬にしてセシリアの眼前に現れる。
それこそ、瞬間移動を思わせる速度をもって。
目を見開く、セシリア。
そして同時に響く、仲間たちの声。
「これは、これは。本当に素晴らしい。流石、アレンさん。勇者の名に恥じぬ加護の力」
ぱちぱちと上品に拍手をし、アレンを讃えるスズメ。
「うむ。その歳で加護の重ねがけも自在となれば……往年のセシリア様より、更に上の境地に辿り着けるやもしれませぬな」
何度も頷き、ブライはそうアレンを評する。
「はははッ、すげぇな!! アレンッ、予想以上だぜ!!」
豪快に笑いアレンの褒める、ゼウス。
そして、セシリアもまたアレンの頭に手を載せーー
「すごいよ、アレンくん。やっぱり、わたしの見込んだ通り。わたしがアレンくんと同じ歳。その頃のわたしより、数段上。ううん。それどころじゃない」
そう声を発し、腰をかがめアレンの目線に視線を合わせるセシリア。
「それに」
アレンの瞳。
その中にゆらめく闇。
それを心眼の加護が付与された瞳をもってじっと見据え、セシリアは呟く。
「まだまだたくさんの加護に目覚めたみたいだね。その中でも、存在の加護と冥府の加護。うん、うん。今のアレンくんは、勇者の次元を遥かに超えちゃってる。何故、そうなっちゃったのか? お姉さん、気になるな」
柔らかい声音。
だが、そこには確かに元勇者として今のアレンを知りたいという思いが宿っている。
両の手に収まりきらない、加護。
それに目覚めたアレンに、セシリアは好奇を抱く。




