女剣士②
そのガルーダの姿。
それに周囲の取り巻きたちは唖然とする。
「あ、姉御。何があったんですか?」
「い、いきなりどうしたんです?」
「さ、さぁ。はやく立ってください」
狼狽え、なんとかガルーダを立たせようとする面々。
だが、ガルーダには"立つ"筋力"すらもない。
「くっ、くそ。くそったれぇ」
地に這いつくばり、唇を噛み締めるガルーダ。
そして顎を地面につけたまま--
「ち、力が。全く、はい。は、入らない」
ガルーダは胸中で呟く。
そして。
自分の視線の先。
そこに佇む、アレン。
その勇者の姿を見据え、ガルーダは声を張り上げた。
「あッ、アレン!! おまえッ、なにをした!?」
「答える義務はない」
「なにをしたと聞いているッ、答えろ!!」
アレンの返答。
それに青筋をたて、吠えるガルーダ。
その表情。
それは侮辱された雌犬そのもの。
そんなガルーダの元。
そこに歩み寄る、アレン。
そして。
ガルーダの眼前。
そこで片膝をつき、アレンは声を落とす。
「それ以上吠えると。勇者の加護がひとつ"声の加護"も解除するぞ? 当たり前のように声を発することができること。それに感謝したことはあるか?」
「な、なにを言って」
「……」
「ひぃっ」
こちらを見下ろす、アレン。
その光を失い闇に染まった双眸。
それに、ガルーダは思わず悲鳴をこぼしてしまう。
だが、そこに。
「き、きさまぁ!!」
「姉御を元に戻しやがれ!!」
「勇者のクセにッ、人間たちに敵意を向けやがって!!」
取り巻きたちの声。
それが響き、膝をついたアレンの背後より剣を突き立てようとする。
殺気をたぎらせ、アレンを殺すつもりで。
しかし。
「アレン様を守れ!!」
「「ぐぉぉぉん!!」」
フェアリーの勇ましい号令。
それがとどろき、魔物たちはガルーダ以外の人間へと攻撃を開始しようとする。
「無駄なことを!!」
「この姉御より授かった装備があれば負けることはない!!」
「返り討ちにしてくれる!!」
ガルーダより渡された装備。
それは全て最高のモノ。
勇者の加護がなくても、それなりには戦える装備。
だが、しかし。
「勇者の加護がひとつ。装備の加護を解除」
更に響く、アレンの声。
刹那。
「な、なんだ!?」
「そ、装備がまるで意思を持っているように」
「解除されていくぞ!?」
消えていく装備。
それに混乱し、半狂乱になる取り巻きの者たち。
そしてそれはガルーダも例外ではない。
「そ、装備が。わた。わたしの、装備がぁ」
もはや、生きた心地のしないガルーダ。
それにアレンは立ち上がり、敵意のこもった声で応えた。
「人間共。一体いつから、当たり前のように装備ができると思っていた?」
「「……っ」」
血の気が失せる、人間たち。
手のひら。
それを魔物たちにかざし--
「更なる加護を付与。魔物たちに装備の加護を」
声を響かせる、アレン。
途端。
散らばった装備品。
それがそれぞれの魔物たちの姿カタチに合わせ、変化。
「こ、これは」
「ワオーン!!」
「わ、我らも人間共の装備が可能になったのか!?」
装備。
それが充実し、猛る魔物たち。
そして更に。
「勇者よ。これもお主の加護なのか?」
漆黒に輝く鎧。
そして、魔剣に変化したエクスカリバー。
その変化したガルーダの剣と鎧。
それを装備した女魔王。
そして、嬉しそうに微笑む魔族の王。
それが、アレンたちの前に現れた。
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