ペルセフォネ③
ここから書き直します。
読者の皆様、申し訳ありません。
読み返してみたらなんだかめちゃくちゃな展開でしたね。
その光景。
その変わらぬ死を与え続ける、アレンの姿。
それをペルセフォネは見つめ、呟く。
「畏れない。わたしは畏れない」
しかしその言葉とは裏腹に、その顔にはこれまでの余裕はない。
あるのは、アレンに対する形容しがたき畏れの表情。
無意識に下がる、己の足。
それに、ペルセフォネは唇を噛み締めた。
なぜ、このワタシが人を畏れる。
なぜ、このワタシが後退しなければならない。
「ない。そんなこと、あり得てはならない」
吐き捨て、その双眸から色を無くすペルセフォネ。
そしてその口元をつりあげ、両手をだらんと垂れ下げペルセフォネは言葉を紡がんとした。
「冥府の加護がひとつ」
そのペルセフォネの思惑。
それを遮らんとする、アレンの意思。
開かれた、ペルセフォネの口。
そこに穿たれる、短剣。
飛び散る闇。
100度目の死を与えられる、ペルセフォネ。
しかし、止まらない。
散った闇。
そこからその身を跨げ、片膝をついた格好でペルセフォネは言葉を紡いだ。
「ぜんぶ。きえろ」
刹那。
ペルセフォネの両目。
そこに瞬く、冥府の加護。
曰く、それは--
「消滅の加護」
ペルセフォネの見たモノ。ペルセフォネが消したいと思ったモノ。
それが全て消滅する、加護。
そして、それをもってペルセフォネが見定めたモノ。
それは、アレンただ一人だった。
だがその視線を受けても、ペルセフォネの眼差しを受けてもアレンは消滅しない。
「なぜ、きえない。どうして、消えてくれないの? あなた。オマエは一体」
小刻みにその身を震わせ、得体の知れぬアレンを畏れるペルセフォネ。
冥府の女王。
今まで、畏れ等抱かなかった冥府のモノ。
そのモノを。そのモノの心に、畏れを抱かせるアレン。
それはもはや、人間の域を超えた存在。
「……」
ペルセフォネを見定める、アレンの双眸。
そこに宿るは、感情無き光。
静かに、「ペルセフォネ」その場に膝を折ったペルセフォネの名を呟き、アレンは自らの胸に手をあてる。
そして。
「存在の加護。その名を知っているか?」
ペルセフォネの脳内。
そこに声を響かせる、アレン。
その声。
それに、ペルセフォネは目を見開く。
両手で頭を抑え、カチカチと歯を鳴らす。
「知らない。しらない。そんな、加護。知らない」
しかし、その言葉の意味することはまさしく--
「そ、そんな、加護なんてない。あるわけない。そ、そ、そんなことができる奴。奴なんて居てはならない。いちゃいけない」
声を絞り、こちらを見据えたアレン。
その人ならざるモノの目から逃れようとする、ペルセフォネ。
だが更に、アレンは声を響かせる。
「消せるモノなら消してみろ。その冥府の加護をもって、消してみろ」
「け、消してやる。消してやる。このワタシを。ペルセフォネの加護。冥府の加護をみくびるナ」
頭を抑えたまま、ペルセフォネは立ち上がる。
そしてその身を震わせたまま、周囲へと視線を巡らせた。
漆黒の瞬き。
消滅の加護。
それが付与された己の目をもって。
だがそれを、「この世界は存在の加護に満ちている」そんなアレンの声が打ち砕く。
刹那。
ペルセフォネは悲鳴に似た絶叫をあげた。
「あッ、ありえない!! 貴方の加護のおかげでこの世界が存在しているというの!? た、たかが勇者の分際で!! たった一人の人間の分際でェ!!」
ふらつく、ペルセフォネ。
そのペルセフォネに、アレンは手のひらをかざし吐き捨てる。
「冥府の加護。それを返してもらうぞ」
その言葉に、ペルセフォネの本能が悟る。
「返してもらうぞ」
そのアレンの言葉。
まるで、最初は自分のモノだったかのような言葉。
その意味。
それを理解する前に、ペルセフォネはアレンの言葉通りに己の加護を失う。
そして。
「……っ」
ペルセフォネは、ただの少女に。
剣ひとつでその命を散らす矮小な存在に成り下がったのであった。
2023年6月23日。
ここから大幅に変更します。




