女剣士①
〜〜〜
世界各地。
そこでは早速、加護が消えた影響が現れていた。
魔法が使えない。
スライムに村が蹂躙された。
冒険家ギルドに依頼が殺到し手が回らない。
治癒魔法が使えないと商売あがったりだ。
轟く人間たちの不満不平。
しかし、その不満不平が解消されることは二度とない。
当たり前の生活。
それが勇者の加護によって成り立っていたという現実。
それを人々は理解していなかった。
だが、人々はまだ知らない。
勇者の加護。
それが自分たちではなく、魔物たちにかかってしまったということを。
そして、更に人々はまだ気づかない。
加護。
それが消えたことによる、影響。
それは人々が思っている以上に深刻だということを。
〜〜〜
「アレン様」
先を進む、アレン。
その背にフェアリーは声を投げかける。
その声。
それにアレンは足を止め、応えた。
「どうしたんだ?」
優しい声音。
それはアレンが完全に魔物側に立ったことを意味している。
そんなアレンの耳元。
そこに飛び、フェアリーは小声で話す。
「大丈夫だとは思うのですが……その。奴等は本当に弱体化しているのですか?」
「奴等?」
「はい。貴方様の元仲間である三人。あの者たちは勇者様のご加護などなくても元々強いのではないですか?」
そのフェアリーの不安。
それをアレンは払拭する。
人差し指。
それをもってフェアリーの頭を優しく撫で--
「安心してくれ。あいつらは俺に手も足も出ない」
そう声を響かせ。
「それどころか、奴等は普通の生活さえままならなくなる。魔物に勝てない。魔法を使えない。そんなことが比にならないくらいな」
己の瞳。
そこにアレンは、元仲間たちに対する敵意を宿す。
そのアレンの表情。
それを受け、フェアリーは安心しアレンの側から離れる。
「流石、勇者様。それを聞いて我々の不安は全て解消しました」
響くフェアリーの声。
それに魔物たちの胸に宿っていた不安も消滅。
だが、そこに。
「見損なったぜ、アレン」
女剣士とその取り巻きたち。
そのいかにも強そうな面々が現れる。
森の茂み。
その中から、勝ち誇った表情を晒しながら。
その数、約数十人。
筋骨隆々とし、褐色肌と黒髪が特徴的なガルーダ。
ビキニアーマーを装備し、溢れ出る屈強さは男剣士の比ではない。
そしてその装備。
それは紛れもなく、伝説の装備。
銀色に輝くビキニアーマー。
そしてその手に握られているのは、聖剣エクスカリバー。
ビキニアーマーは全ての魔法を無効化し、エクスカリバーは全ての闇を祓う代物。
漂う金色のオーラ。
それは勇者の加護が無くなったとしても、衰えることはない。
「あ、アレン様」
「「……っ」」
勢い。
それを無くし、アレンの後ろに退く魔物たち。
だが、アレンは一歩も引かない。
魔物たちの前。
そこに佇み、声を響かせるアレン。
「ガルーダ。その装備返してもらうぞ」
「あ? 男らしく力ずくで取り返してみろ。てめぇ、勇者だろ。そんな感じだったから……わたしを含む全員。あの男に取られたんだろ?」
嘲笑。
それを響かせ、ガルーダは剣の刃先をアレンに固定した。
そして。
「言っておく。てめぇの加護なんてなくてもわたしは全く--」
問題ない。
そうガルーダが吐き捨てようとした瞬間。
「勇者の加護がひとつ。筋力の加護。それを解除する」
ガルーダにかかっていた筋力の加護。
それが消滅。
一瞬にして。
「!?」
ガルーダの筋力。
それが幼子以下になってしまう。
そして、自身の装備の重み。
それに耐えきれず、「く、くそぉっ」と生まれたての仔馬のようにその身をプルプルと震わせ--
「ひぎぃッ」
情けない悲鳴。
それをあげ、ガルーダはその場に崩れ落ちてしまった。