表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

77/128

王都④

〜〜〜


「アレン。あれん」


王城へ向け進む、アレン。

その姿を見つめ、声を漏らす一人の少女。

風にその髪を揺らし、目を見開くその姿。

それは明らかにただの人間ではない。


漆黒に濡れたドレス。真紅の双眸。

そしてその小さな肩。

そこには一羽の鴉が止まっている。

城の頂。

王都で最も空に近い場所。

そこに、その少女は佇んでいた。


「かぁかぁ」


少女の耳元。

そこで鳴き声を漏らし、翼を揺らす鴉。

それはまるで、これよりはじまる勇者の復讐を心待ちにしているよう。

そんな鴉の姿。

少女はそれを一瞥し、自らもまた妖し気にその頬を緩ませたのであった。


〜〜〜


固唾を飲み、閉じられた鉄扉を見つめる面々。

既に城は半壊。

至る所より火の手があがり、もはや城は陥落間近。


しかし、兵たちは諦めない。

皆、その手に剣を握り--


「我らの命ッ、それは王の為に!!」


「「おぉぉ!!」」


響く掛け声。

それに兵たちは応え、自らを鼓舞していく。

彼等は知らない。

自分たちが命を賭し守ろうとしている、王。

それが今、得体の知れぬナニカの加護を受けているということを。


しかし、その何も知らぬ兵たちの勢い。

それを、押し倒された鉄扉が消沈させる。

まるで枯葉のように、軽く。

指はじきひとつで鉄扉を押し倒し、それを踏み締めるアレン。


そのアレンの眼差し。

そこに宿るのは、闇。

そしてその身から漂うのは、混じり気のない殺気。


「……っ」


息を飲み、無意識のうちに後退をはじめる兵たち。

その姿。

それは、眼前に迫る捕食者。

それに無抵抗を余儀なくされた被捕食者そのもの。


そんな兵たちに、アレンは問いかけた。


「その加護は誰のモノだ?」


アレンの問い。

それに顔を見合わせる、兵たち。


「答えろ。ソレは誰のモノだ」


兵たちにかかった、装備の加護と剣術の加護。そして、鼓舞の加護。

それはアレンの知っている加護ではない。

どこか暗く。そして、冷たい。


かつてアレンは王城を訪れた。

その時、感じた加護。

それとは全く違う、およそこの世のモノとは思えぬ異質な加護。


こちらに向け投げかけられた不可思議なアレンの問い。

それに顔を見合わせ、兵たちは声を響かせる。


自らの心。

それを懸命に奮い立たせ--


「なッ、なにを言っている!? 我らにかかっているのは聖騎士様の加護!!」


「この城を守護しッ、この王都をお守りする誉れ高き騎士様!!」


勇者アレンッ、お前も知っているはずだ!!」


小刻みにその身を震わせながら。


その響いた声。

それを聞き、アレンは拳を固める。


そして。


「創造の加護がひとつ」


呟き、その手に聖剣を握ったアレン。

そんなアレンに向け、兵たちは駆け出そうとした。

剣を構え、命さえも捨てる覚悟をもって。


そして更に、何者かによって兵たちに付与される速度の加護。


響く、兵たちの猛り声。

アレンに迫る、漆黒に染まりつつある兵たちの姿。


アレンはしかし、動じない。


「回避の加護」


自らに加護を付与し、アレンは兵たちの攻撃全てを受け流そうとした。


そして、アレンと兵たちがぶつかろうとした時。

それは、起こる。


アレンの眼前。

そこで兵たちが剣を振り上げた、瞬間。


「そろそろ。限界」


そんな澄み切った声。

それが響いたかと思えば、次々とその場に崩れ落ちていく兵たち。


漆黒に飲まれ、兵たちは声さえもあげれず瓦解していく。

その様。

それはまるで、に飲まれ灰と化していく人間ものそのもの。


「普通の人間。わたしたちの加護。四つが限界。ひ弱」


ぺたぺた。

浸み渡る、素足の足音。


「ふふふ。はじめまして、人間アレン。ううん。障害アレンって言ったほうが正しい。かな?」


幼い声。

それを響かせ、アレンの視線の先に現れた者。


それは、やはり。


人ならざる--


「ペルセフォネ。ぺるせふぉね。それが、わたしの名前。ふふふ。冥府。めいふからやってきました」


冥府からの来訪者だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ