共有④
同時に、アレンは空へと視線を向ける。
そして、ヴァルキリーたちに念話を飛ばした。
"「各地に飛んでください」"
頭の中。
そこに響く、アレンの声。
それにヴァルキリーたちは頷き、アレンの言葉通りに翼をはためかせ飛んでいく。
共有の加護。
それが付与され、アレンと五感を共有した状態で。
その様。
それを見つめ、ガレアは魔物たちに声を響かせる。
「進軍を再開するッ、目的地は王都!! 人の世ッ、それを終わらせる為に!!」
ガレアの声。
魔物たちはそれに雄叫びをあげ、次々とその場に整列していく。
そしてその先頭にはフェアリーは浮遊しリリスは佇み、まるで指揮官のような表情を浮かべていた。
その熱気。
しかしその中にあって、クリスの表情は晴れない。
その理由。
それは--
「アレン」
「はい」
「あの者はどうする?」
ランスロットの亡骸。
それを見据え、アレンに問いかけたクリス。
己の血溜まり。
その中で冷たく、横たわるランスロット。
「このままここに」
瞬間。
アレンは声を響かせた。
クリスの言葉の続き。
それを遮るようにして。
「まだ手はあります。ですので」
「きゅっ」
「きゅっきゅっ」
アレンの言葉。
それにスライムたちはランスロットの身体を担ぎ上げ、魔王城へと引き返していく。
アレンの言わんとしたこと。
それを理解して。
その嬉しそうなスライムたちの姿。
ガレアはそれを見据え、呟く。
「手はある、か」
ガレアの脳内。
そこに浮かぶ、とある加護の名。
しかしガレアはそれを口には出さない。
胸に留め、その表情を柔らかくするガレア。
そしてクリスもまた。
「……」
言葉は発さない。
だがその顔には、ガレアと同じく柔らかい。
そんな二人の雰囲気。
それを悟り、リリスとフェアリーはひそひそ話。
「おい、リリス」
「?」
「もしかしてだけどよ」
「なに?」
「あの湖騎士」
「うん?」
「勇者様の加護で--」
ひそひそ。
「えっ。そんなことできるの?」
あからさまに驚く、リリス。
「わからねぇ。だが」
「あり得ると思う」
頷き、リリスはフェアリーに同意。
そんな二人の周囲。
そこにはいつのまにか、整列を崩し興味津々な魔物たちが集まり聞き耳をたてていた。
「ふむ。ないことは無いと思われます」
「ぐるるるっ」
「確かにそうなれば心強い。しかしそんな簡単にいくのか?」
「そうよそうよ」
口々に囁き、半信半疑の魔物たち。
っと、そこに。
「なにをしておる」
「「!?」」
驚く、魔物たち。
そしてガレアは、三度命を下す。
「進軍の準備を整えるのだ。戦いはまだ終わっておらぬ」
ガレアの命。
それを受け、再び鼻息荒く整列を開始する魔物たち。
そこにかかる、アレンの加護。
「共有の加護」
光に包まれ、アレンと共有される魔物たち。
その光景。
それはまさしく、更なる勢いを得た魔物の軍勢そのものだった。
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