共有③
響いたアレンの言葉。
それに、魔物たちは盛り上がる。
「新しい仲間が増えたのか!?」
「弓兵。確かに、数が足りなかったな」
「はやく合流したいものだ」
「きゅっ」
まだ見ぬ新たな仲間たちの姿。
それを想像し、ゴブリンを中心とした魔物たちは口々に興奮を露わにしていく。
その中にあって、しかしフェアリーだけは真面目な顔をし口を開く。
「落ち着くのだ、諸君。弓兵が増えたとて油断は禁物。ここは改めて気を引き締め直すこと。それも大切だ」
魔物たちの頭上。
そこを真剣な顔で何周も旋回する、フェアリー。
しかしその内心では--
"「すごすぎだろ……弓兵の補充と補強っなに? どうやったんだ? 勇者様の加護。そこに不可能って文字はないのか!?」"
アレンに対する賛辞。そして羨望。
それを呟き、アレンの凄まじさに胸を高鳴らせていた。
そんなフェアリーに声が飛ぶ。
「落ち着くのはフェアリーのほうだ。もうかれこれ10周はわたしたちの上をくるくるしてる。アレンに一番興奮しているのはフェアリー。間違いなく、貴女」
フェアリーを指差す、怪訝なリリス。
旋回を止め--
「逆に教えてくれ」
フェアリーは逆にリリスに問いかける。
「その。今のアレンに興奮しない奴なんているのか? 目を閉じていた時間、たったの数分。そして目を開けたと思ったら……弓兵の補充と補強を完了しました。って声を響かせるんだぜ?」
「確かに興奮しない奴なんて居ない」
「だろ?」
「うん」
納得し、頷いたリリス。
そのリリスの頷きに合わせ、場に居る魔物たちも皆一斉に頷
く。
フェアリーの問い。それに全くの同意の意を表しながら。
そんな魔物たちの姿。
それを見つめながら、ガレアはアレンに声をかける。
柔らかな声音。それをもって。
「アレン」
「はい」
「奴等に。メリウス率いる者共に。なにをしたのだ?」
「共有の加護」
ガレアの問い。
それに短く応え、アレンはメリウスの最後を思い出す。
そして。
「奴の五感を共有。そして、その視界にうつった矢に対し、複製の加護を付与。10000本の矢。それに穿たれ……原型も留めていませんよ、あの人間は。俺に念話を飛ばした時点で、奴はおしまいでした」
淡々と。
顔色ひとつ変えることのない、アレン。
そして更に声をこぼしていく。
「その後。残った目玉の視界。そこにうつった奴等の骸。それに変化の加護を付与。全員、魔物です。ただで死なせたらもったいないと思ったので」
響く、アレンの無機質な言葉。
それを聞き届け、ガレアは三度アレンに問いかけた。
「だとすれば」
「……」
「お主との接点。それを少しでも持てばーー」
「はい。共有の加護で」
風に髪を揺らし、アレンは応えた。
「味方なら手助け」
そして。
人の悪意により弄ばれ、その命を散らしたランスロットの最期。
それを思い出し、アレンは言い切った。
「敵なら一欠片の慈悲もありません」




