共有②
原型を留めぬ亡骸と化す、メリウス。
しかし、アレンの共有の加護は未だ解かれない。
"「変化の加護」"
メリウスの転がった目玉の視界。
それを介し、更なる加護を付与するアレン。
矢に穿たれ、骸と化した弓兵たち。
その物言わぬ肉塊となった存在たちを、アレンは魔物へと変化させる。
人の形。
それを失い、彼等はメリウスの加護のみが残った骸骨弓兵へとその姿を変えていく。
その数、およそ数百。
皆カタカタと骨を鳴らし--
身体に刻まれた動作。
弓を掲げる動きを一斉にとる、骸骨弓兵たち。
その骸骨兵たちにアレンは続けて魔力を付与。
"「魔力の加護」"
加えて。
"「賢さの加護」"
刹那。
骸骨弓兵たちは魔力と知能を得、魔法を使え言葉を理解できる程にその段階をあげる。
そして皆、その場に整列しなにが起こったのかを理解しようと互いと互いで骨を鳴らし合う。
そんな骸骨兵たちに、アレンは念話を飛ばす。
"「聞こえますか?」"
丁寧なアレンの声。
それに彼等は応える。
「はい」
「えぇ」
「どなた様でしょう?」
次々と返ってくる声。
アレンはそれに三度、応えた。
"「俺はアレン」"
名を述べ。
"「人の世。それを終わらせる為、あなたちの力を貸していただけませんか?」"
「人の世を終わらせる?」
「なんだかすごい」
「アレン……どこかで聞いたことのある名前」
「アレン。アレン」
「ダメだ思い出せない」
「しかし、人の世を終わらせるというご提案。それををなされる程のお方なのですから、きっとすごい方なのでしょう」
アレンの念話。
それに対し、驚きと戸惑いを声に交えて応えていく骸骨兵たち。
しかし次第に落ち着いていき、骸骨兵たちは続々と頷いていく。
「人の世を終わらせる。聞くだけでワクワクする言葉」
「この姿である以上、我々は既に魔物側」
「力が必要と仰られるのなら。喜んでお貸ししましょう」
「「我らの力は貴方様の為に」」
人であった頃の記憶。
それを忘れ、アレンの言葉に満場一致で同意を示す骸骨兵たち。
"「ありがとうございます」"
骸骨兵たちの同意。
それに、アレンは感謝の意を表す。
そして同時に遠距離攻撃の戦力。
それを手に入れた、アレン。
「それで、アレン殿」
「わたしたちはなにをすれば?」
「どこかに矢を射よ。と言うなら、喜んで」
"「そこで待機しておいてもらえませんか? いつか必ず、力が必要になる時がきますので」"
「「かしこまりました」」
アレンの声。
それに頷き、その場で寛ぎはじめる骸骨兵たち。
それを見届け--
「千里眼と致死。そして必中の加護が付与された弓兵」
メリウスの加護。
それが付与された骸骨弓兵。
アレンはその存在たちの名を呟き、ゆっくりと瞼を開ける。
そして。
「弓兵の補充。そして補強。完了しました」
そう声を響かせた、アレン。
その表情。
そこに宿るのは、人の世を終わらせるという曇りのない思いのみだった。




