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勇者として②

その一雫。

それを指に受け、アレンは自らの手によりつけたランスロットの首元の痣を治癒する。


眩い光。

それに包まれ、消えていく痣。

自らの手。

それをもって、ランスロットの命を奪おうとした自分の所業。首を絞め、へし折ろうとしたあの時の感情。

あれは紛れもなく、純然たる殺意だった。


「アレン」


「はい」


「あまり自分を責めるでない」


アレンの思い。

それを汲み、声を響かせたガレア。

その声に頷き、アレンは思いを飲み込み立ち上がる。


そして。


「俺に対する憧れ」


「うむ」


「……」


空を見つめ。

ランスロットが抱いていた勇者に対する憧れ。

そして思いに唇を噛み締める、アレン。

その勇者アレンの頬に降り注ぐのは、粉雪。


それはまるで、アレンの心に寄り添うにしんしんと振り続け--


「魔王様。俺は本当に」


側に佇む、ガレア。

そのどこか悲しそうな横顔を見つめ、アレンは問いかける。


「皆が憧れてもいい勇者なんでしょうか?」


その問いかけ。

それにガレアは応えた。


アレンを見据え、にこりと微笑んで。


「胸を張れ。お主は紛れもなく勇者だ。魔王である我が保証してやる」


そしてアレンの肩を優しく抱き寄せ、更に続ける。

優しい声音で。アレンの心に火をくべるように。


「アレン、勇者は勇者らしく振る舞え。世界を変えるのであろう? そんな調子でどうするのだ」


「でも、俺は」


「でももなにもない」


アレンの言葉。

それを遮り、アレンを抱きしめるガレア。


「お主の口。そこから弱気な言い訳等、聞きたくない。勇者は世界を導く者であろう? ランスロットがお主に対し抱いていた憧れ。幼き日から焦がれていた勇者への羨望。それをお主は否定するつもりか?」


響くガレアの思いのこもった声。

そしてそれに続く、フェアリーの励まし。


「弱気になるなって。あんたは勇者なんだろ? 俺たちを最後まで導いてくれって」


アレンの耳元。

そこで声を発し、ウインクをするフェアリー。


「そうだッ、そうだ!! フェアリーもたまにはいいこと言うね!!」


「そうだろ? わたしだってたまにはいいこと言うんだぜ?」


「すごいっ。えらい!! なでなでしてあげる!!」


「俺たちも」


「わたしもわたしも」


「ワオーン!!」


いつもの調子のフェアリーとリリス。

そしてリリスに続く魔物たちのフェアリーを労う声。

その、まるでアレンを励まそうとするかのような魔物たちとリリスの和やかな雰囲気。


しかし、それを砕かんとする--


メリウスの悪意。


三度、射抜かれた矢。

それはランスロットの命を奪った時より、更にその輝きを増し、アレンの命を射抜かんとした。


致死と必中。

その二つの加護。

それが重ねがけされた、矢。


そして同時に響く、メリウスの声。


「目障りなモノ。その湖騎士ゴミの元に行きたければさっさといけ」


それはアレンの脳内に直接響き、嘲笑う。


風を切り。

そして、アレンを見定め飛来する矢。

しかし、アレンは動じない。


矢の気配。

それを感じ、ガレアから身を置くアレン。


そして、一言。


「反転の加護」


刹那。


メリウスの矢。

それがくるりとその向きを変え、標的をメリウスへと変更。

アレンの意に応え、メリウスへとその矛先を向け飛来していくのであった。


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