人の闇②
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王への報告。
そこから遡ること、数時間前。
とある山の頂。
そこで、その偵察兵たちは立ち尽くしていた。
千里眼の加護。
それを国に仕える神弓士より付与され、遥か遠くのモノまで見える偵察兵たち。
そして、その偵察兵たちが見た光景。
それはまさしく、絶望だった。
ランスロットの加護。
それに包まれた水路の街。
そこで繰り広げられた、勇者と湖騎士との戦い。
「……っ」
今、思い出しても震えが止まらない。
「い、今すぐ王にご報告を」
「あ、あぁ。これは、我らが思っている以上に深刻な事態。各所に張られていた結界が喪失し、突如として人々が魔法を使えなくなった理由……それが、まさか」
「勇者が魔物側に寝返り、我らにかかっていた加護が消滅したことが原因だったとは」
「加えて。人間たちにかかっていた加護が魔物たちに」
口々に声を漏らし、汗を滲ませる偵察兵たち。
そしてその中の一人。
「い、今すぐ王城に戻り王にご報告をしてくる。お前たちは引き続きここに残り、勇者と奴等の動向。それを偵察しておいてくれ」
偵察兵長はそう声を響かせ、懐に忍ばせてあった転移の翼を使用する。
目的地は王城。
転移していく、偵察兵長。
それを見送り、残った者たちは引き続き勇者と魔物たちの偵察を再開。
瞬間。
「お、おい。なにしてんだよ、アレ」
「……っ」
まるでこちらに見せつけるように。
魔物たちに更なる加護が付与されていく。
アレンにより。淡々と。
それを彼等はただ見つめ、息を飲むことしかできなかった。
〜〜〜
「ご報告です」
陥落した水路の街。
そのかつてランスロットが治めていた街。
その中央広場に、ゴブリン参謀の声が響く。
「空を舞う、視力の加護を付与されたワイバーンたち。それによると……ここより遥か彼方の山の頂。そこにこちらを偵察する人間たちが居るとのことです」
ガレアと、アレン。
二人の眼前で片膝をつき、頭をさげるゴブリン参謀。
「ご命令さえあれば、今すぐにでも対処いたします。いかがなさいましょうか」
その声。
それにガレアは応えた。
「偵察か。ふむ。今すぐ、始末」
するのだ。
しかしそれを遮る、アレンの声。
「ここは敢えて見せつけるのも、手。俺に任せてください」
淡々と声を発し、魔物たちに手のひらをかざすアレン。
そして更に続ける。
「圧倒的な力の差。それがあってこその抑止力。奴等の反抗の芽。それを根こそぎ毟り取る」
そのアレンの声の余韻。
それに彩られ、更なる加護が魔物たちに付与。
「賢さの加護がふたつ。魔力の加護がふたつ」
途端。
魔物たちの知能レベルと魔力は更に倍に向上。
皆、ワンランク上の装備を創り、魔法を操ることができてしまう。
興奮する、魔物たち。
「ま、ますます強くなったぞ」
「うふふふ。強くなっちゃった」
「最高だぜ」
「ワオーン!!」




