反転攻勢③
今までの平和。
それは全て勇者の力があってこそ。
それを理解せず、最後の最後で詰めを誤った愚かな人間たち。
「人間共にかかっていた勇者の加護。それをひとつ解除する」
声を発し、殺意をたぎらせるアレン。
そのアレンを取り囲む、村の兵士たち。
「あッ、アレン!! 貴様ッ、寝返ったのか!?」
「勇者でありながらその所業ッ、恥ずかしくないのか!?」
「この裏切り者め!!」
口々にアレンを罵り、兵士たちは剣を抜いていく。
その様。
それに魔物たちもまた興奮していく。
その魔物たちの姿。
それに兵士たちは意気揚々と戦意を露わにする。
「ふんっ、雑魚共め。一度、俺たちに敗れたことを忘れたのか?」
「もう一度、ぶち殺してやる」
「逃げるなら今のうちだぞ」
しかし、兵士たちはまだ知らない。
勇者の力。
それはもはや、人間の為に使われることはない。
勇者の加護。
それがあったから人間たちは魔物たちと互角以上の戦いを演じることができたというのに。
「かかれッ」
威勢よく、魔物たちに突撃していく兵士たち。
それに魔物たちもまた応じる。
スライム。
ゴブリン剣士。
ガーゴイル。
ダークラビット。
ワイバーン。
皆、この世界におけるGランクの魔物たち。
勇者の加護。
それが人間にかかっていた時は、最弱と称されていたモノたち。
なにも知らぬ兵士たちは、ほくそ笑む。
最弱の魔物などに我らは負けない。
勇者も、この人数を相手にしてはタダでは済まないだろう。
だが、その兵士たちの自信。
それは--
べきぃッ
一匹のスライム。
そのただの突進により、脆くも崩れ去ってしまう。
「ぐはッ!!」
血反吐。
それを吐き、吹き飛ばされる兵士。
その光景。
それに兵士たちはたじろぐ。
スライムの突進。
幾度となく受けてきた、ただのスライムの突進。
勇者の加護。
それがあるうちは笑って受け流すことのできた攻撃。
それが今や。
「魔物を舐めるなよ、人間共。俺の加護がなけりゃ……てめぇら人間は、スライム一匹にすら勝てねぇんだよ」
人間はスライム一匹にすら勝てない雑魚に成り果ててしまった。
後退りを始める、兵士たち。
「ゆ、勇者の加護」
「そそそ。そんなものがあったのか」
「い、今まで魔物と戦えていたのは……そ、その加護があったからなのか?」
勇者の加護。
兵士たちはその存在を初めて知る。
だが、時既に遅し。
「作戦名ッ、殲滅!! 勇者様を愚弄した愚かな人間共に一斉攻撃!!」
「「ぐぉぉぉ!!」」
響くフェアリーの号令。
それに呼応し、魔物たちは兵士たちに向け一斉攻撃を開始したのであった。