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湖騎士②

逃げ惑う、兵たち。

その表情。

そこには戦意の欠片もない。

あるのは、空高く浮かぶ要塞に対する恐怖のみ。


「狼狽えるな!! 剣をとれ!! ランスロット様の加護ッ、それに応えるのは今この時!!」


この街の中。

そこでは剣聖の地と同じようにランスロットの加護に満ち、装備ができる。


響く、兵士長の鼓舞の叫び。

しかしその兵士長の顔にも汗が滲んでいた。


あんなモノ。

見たことがない。

宙に浮かぶ要塞。

あんなモノ。見たくもない。


心の底からの震え。

それを必死に抑え--


三度鼓舞の声をあげようとする兵士長。


だが、そこに。


アレンの攻勢。

それが更に降り注ぐ。


「創造の加護がふたつ」


「な……っ」


漆黒に包まれ、一瞬にして創造されるもう一つの要塞。

それは確かに、今空に浮かぶ要塞と瓜二つ。


「創造の加護がみっつ」


「……っ」


巨大な要塞。

それが三つ、街の上空へと出現。


「創造の加護が10」


10もの空中要塞。

それが街の上空を取り囲むように展開。

全ての砲口。

それを街へと固定する。


からんっ


と。その手から剣を落とし、瞳から光を無くす兵士長。

それに倣い、僅かな戦意を表明しようとしていた兵士たちも完全に心が折れてしまう。


その様。

それを視力の加護をもって見下ろす、アレン。


そして。


「作戦名、正面突破」


呟き、アレンは念話を飛ばす。

街の外を包囲した魔物たちの脳内に向けて。


それに応え、魔物たちは咆哮。

一斉に街へと突撃し、一気に街を攻め落とさんとする。


闇に包まれた10の巨大な空中要塞。

その影に包まれ、薄暗くなる街中。


そしてはじまるは、蹂躙。

もはや抵抗などできない、兵士たち。

蜘蛛の子を散らすように逃げ惑い、兵士たちは街を放棄せんとする。


「きゅっきゅっ」


スライムたちにへばりつかれ、溶かされていく者。


「ワオーン!!」


ケルベロスに咥えられ、餌にされる者。


ゴブリンに囲まれ、袋叩きにされる者。


「お前らは我らの奴隷になるかッ、屍になるかの選択肢しかない!! さっさと白旗を振ったほうが身のためだぞ!! 人間共め!!」


フェアリーに煽られ、その場に土下座をしていく者たち。


「あははは。人を燃やすのって楽しい!!」


「ぎゃあああ!!」


リリスの戯れ。

それにより、闇焔で弄ばれる者たち。


その紛うことなき絶望の光景。

だが、兵士長だけは再び瞳に光を宿し剣を拾い上げた。

そしてそれを構え、声の限り叫ぶ。


「まッ、魔物共め!! 好き勝手にさせてなるものか!!」


刹那。


兵士長の目の前。

距離にして数歩前。


そこに、アレンが降り立つ。

風の加護を自身に付与し、ふわりとまるで鳥の羽のように。


「あ、アレン」


声を絞り、後ずさる兵士長。

闇を纏ったアレンの姿。

それを兵士長は直視できない。


それから遅れ、数秒後。

アレンと同じく地へと降り立った二人の姿。


曰く。


魔王ガレアと、剣聖クリス

その二人もまた、アレンの側に現れる。


兵士長は後退り続ける。

生気を無くし、その身を震わせながら。


そして、とんっとその背がナニカに触れ--


次の瞬間。


「アレンにガレア。そして、クリス。お揃い。こちらから出向く手間。省けた」


そんな無機質で透き通った声が響く。

その声の主。

それを仰ぎ見、兵士長はその名を呟いた。


「ら、ランスロット様」


畏敬に満ちた表情。

それをその顔に浮かべながら。


蒼髪を揺らす湖騎士ランスロット。水の加護を操る凛々しい女騎士。

その、蒼のオーラを纏う存在がアレンたちの前に現れた。

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