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湖騎士①

 湖を人の手から解放した、アレン。

 そして、そのアレンの周囲。

 そこには、魔王ガレアと魔物たち。

 そして、クリスとリリスが合流していた。


「リヴァイアサン。元気だった?」


 ちょこんと。

 リヴァイアサンの頭に座る、フェアリー。


「久しぶりに見たけど……相変わらず大きいな。人間共に湖を奪われたって聞いた時は心配したけど、うん。なんとも無さそうだ」


 頭に座ったフェアリー。

 その声にリヴァイアサンは鰭を揺らし応える。

 そして周囲の人魚たちもまた、湖のほとりに近づき魔物たちと話しをする。


「お久しぶり。みんな、元気だった?」


「はい。こちらはみんな。皆さんもお元気でなにより」


 ゴブリン参謀。

 その声はとても温かい。


「勇者がこっち側につくなんてなにかあったの?」


「知りたいな。教えてよ」


「話せば長くなるので、また別の機会に」


「えーっ。けち」


「けちではありません。時間は有意義に使うもの」


 ゴブリン参謀の態度。

 それに人魚たちは頬を膨らませ、水をかけていく。


 ばしゃばしゃ


 それにはしゃぐ、スライムたちとリリス。


「きゅっきゅっ」


「水遊びッ、水遊び!!」


「きゅっ!!」


「えっ、貴女……リリス? どうして貴女もここに? 勇者の仲間だった、あの魔法使いよね? そ、それに。剣聖クリスまで?」


 きょとんとする、人魚たち。

 だが、リリスは動じない。


「今はこっち側なの」


「えっ、どうして?」


「それはね……うーんっと。それより、お水かけてよ。わたし、もっと水遊びしたいんだ」


 賢さ0。

 なので、リリスは自分の楽しいと思うことを優先してしまう。

 顔を見合わせ、戸惑う人魚たち。


 そこに、ガレアの声が響く。


「人魚たちよ。詳しくは時があるときに」


「か、かしこまりました」


 ガレアの言葉。

 それを人魚たちは素直に受け入れる。

 そして、魔物たちは湖の側で休息を開始。

 泳ぎたい面々は湖へと飛び込み、その他の面々はそれぞれ休息をはじめた。


 その光景を見つめながらーー


「して、アレンよ」


「はい」


「次の目的地。それは、どこにする?」


「この湖の管理。それをしている街。それが、近くに」


 アレンと言葉を交わし、ガレアはちいさく頷く

 同時に行使される、アレンの創造の加護。


「創造の加護がひとつ」


 そして、それに創られたモノにガレアは息を飲むのであった。


 ~~~


 湖を管理する街。各地域に水を供給する場所。

 その水路管理を任せられた、要所。

 それがこの街の役目。

 湖騎士ランスロットに統治されたその街は、ランスロットの加護に満ちている。

 加えて街には兵士しか居ない。


 そして、その街の酒場。

 そこの一角。

 そこで勇者の故郷の最期を酒の肴にし、加護を受けた兵士たちはケラケラと下品な笑いをあげていた。


「あの村もあぁなったら、惨めだな」


「最期の最期まで馬鹿な連中だったな。まっ、あの勇者を信じ続けた罰だろ。にしても特にあの女。名前は確かソフィとか言ったか?」


「あの最期の瞬間、笑っちまったな。アレン、アレンとか譫言のように呟きながら辱しめにされ……最期には、皮剥ぎ、磔。火炙りだもんな。はははッ、勇者を信じた愚女にはお似合いの結末だぜ」


 先日、行われた蹂躙。

 勇者の故郷の最期。


 ~~~


 “「アレン……アレン。痛い、いたいよ。アレン。会いたい。あいたい」”


 火がつけられるその瞬間まで。

 ソフィは儚げに笑っていた。


 アレンを信じ。帰りを待った。

 たとえその結果がどうなろうと、後悔などしない。


 だが、それでも。


 “「わたしは、ずっとアレンの側に居たかった」”


 そんな少女を兵は嘲笑した。

 王は「耳障りな戯言を」と吐き捨てた。

 王妃も「愚かな女ね」と切り捨てた。

 同時に巻き起こったのは「燃やせ」「殺せ」といった口汚い罵声。


 執行人は嬉々とした表情で火をつけた。


 最期に、ソフィの耳元で――


「安心しろ。あの勇者もすぐにお前の後を追う。正義感だけは人一倍だったからな」


 そう嫌らしく囁きながら。


 ***


「ほんと傑作だったな。あんな愉快な見世物ッ、はじめて見たぜ!!」


「だよな。あーあっ、また見てぇな」


 笑い。

 酒の入ったグラス。

 それが二人の口につく。


 しかし、その歪んだ酒の席を切り裂く――


「おッ、おい!! 空、空が!!」


「なんだあれは!? 魔物の襲撃か!?」


 慌てふためいた兵たちの声。


 兵士たちは何事かと酒をテーブルに置く。


 そして、足早に店の外に出。

 空を見上げてみる。


 同時に血の気が失せる二人の兵士。


 島が浮いている。

 いや、島ではない。

 あんなに砲口が連なる島なんて見たことがない。

 あの姿は空に浮く要塞そのもの。


 だとすれば――


「てッ、敵襲だ!!」


「今すぐランスロット様に報告を!!」


 声をあげる兵士たち。


 だがその兵士の叫びをかき消すのは、無慈悲な砲撃。

 否、闇色の雷。漆黒の稲妻。

 それが、地へと降り注ぐ。


 はぜる闇光は竜の形をとり、未だ平和を謳歌する街へとその敵意を向けた。

 燃え上がる街並み。

 瞬時に蒸発する兵士たち。


 そして響くは――


「殲滅」


 自身の甘さと決別したアレンの闇に満ちた声だった。

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